新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-バド! ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.3 +12007/10/01 21:21


 バド・パウエルのブルーノート復帰第1作です。後半3曲には、トロンボーンのC・フラーが加わります。

 私の一押しはやはり、「BLUE PEARL」ですかね。

 そういえば、1986年のマウント・フジで(ライブ録音あり)で、OTBのH・ピケンズがこの曲を取り上げてました。あと、アンソニー・ウォンジーの日本企画盤でも。
 という訳でこの曲、パウエルを手本とする若いミュージシャンに何故か人気があるようです。

 もう一曲、無伴奏ソロで演奏される「BUD ON BACH」、手持ちのライナーを確認すると、原曲は「ソルフェジオ・ハ短調」だそうです。
 端正な演奏がだんだんジャズっぽくなっていく様子は、何度聞いてもおもしろいです。


 C・フラー入りの後半では、もろバップの「MOOSE THE MOOCHE」が良いです。


 追加曲である「BLUE PEARL」の別テイク、以前「クレオパトラの夢」とカップリングされ12インチ・シングル(BNJ-27002)として発売されたようです。


●TOCJ-7035 バド! ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.3 +1 / バド・パウエル




●BUD! THE AMAZING BUD POWELL Vol.3 / BUD POWELL Blue Note BST 1571

01. SOME SOUL (Bud Powell) 6:56
02. BLUE PEARL (Bud Powell) 3:45
03. FRANTIC FANCIES (Bud Powell) 4:49
04. BUD ON BACH (Bud Powell) 2:29
05. KEEPIN' IN THE GROOVE (Bud Powell) 2:53

06. IDAHO (Jessie Stone) * 5:13
07. DON'T BLAME ME (Fields-McHugh) * 7:30
08. MOOSE THE MOOCHE (Charlie Parker) * 5:47

09. BLUE PEARL (Bud Powell) -alternate take-


Curtis Fuller (tb)* Bud Powell (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds)
Recorded on August 3, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-デイヴィス・カップ / ウォルター・デイヴィス Jr.2007/10/02 03:09


 このアルバム録音直後、ジャズ・メッセンジャーズに参加する期待の新人(当時)、W・デイヴィス Jr.のリーダー作。
 前年にはドナルド・バードのバンドでヨーロッパに行き、名盤「Byrd In Paris」など沢山のライブ録音を残しております。

 またフロントの2人とデイヴィスは、3ヶ月前に「New Soil / Jackie McLean(4013)」で競演した仲です。
 で、「New Soil」には本アルバムのタイトルと同じ、「Davis Cup (W.Davis Jr.) 」という凝った曲が収録されているからややこしい。


 アルバムは特に、作・編曲家としてのW・デイヴィス Jr.の才能を、世間に紹介ことに注力しているようです。


 また彼のピアノスタイルをあえて例えると、ハンク・ジョーンズ(Hank Jones)のように端正なタッチのピアニストが、ファンキー風の弾き方をしているような・・・・。
 またソロの時、ある決まったフレーズを頻繁に使うので、結構判別しやすい人でもあります。


 全曲、W・デイヴィスのオリジナルですが、何故かブルーノートお得意の「哀愁」とか「ブルージー」には程遠い曲が並びます。
 綺麗なアンサンブルのひたすら陽気な曲やメランコリックな曲など、ホント、女性に好まれそうな曲調のオンパレードです。


 1曲目のやけに陽気なナンバー「'SMAKE IT 」では、ホーンの2人がまるでH・シルバー・クインテットのように、ピアノ・ソロのバックで盛り立ててくれます。

 また3曲目の素敵なバラッド「SWEETNESS」は、デイヴィスの美しいソロの合間に、バードがこれまた素晴らしいソロで合いの手を入れてくれます。

 あ、全編で聴けるA・テイラーの切れのあるドラムも、聴き逃せないなポイントですね。



●TOCJ-7036 デイヴィス・カップ / ウォルター・デイヴィス Jr.




●DAVIS CUP / WALTER DAVIS JR. Blue Note BST 4018

01. 'SMAKE IT (Walter Davis Jr.) 5:25
02. LOODLE-LOT (Walter Davis Jr.) 5:55
03. SWEETNESS (Walter Davis Jr.) 8:55

04. RHUMBA NHUMBA (Walter Davis Jr.) 6:50
05. MINOR MIND (Walter Davis Jr.) 6:30
06. MILLIE'S DELIGHT (Walter Davis Jr.) 5:50

Donald Byrd (tp) Jackie McLean (as) Walter Davis Jr. (p) Sam Jones (b) Art Taylor (ds)

Recorded on August 2, 1959 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.


●おまけ●
デビス・カップ:
国際テニス連盟(ITF)主催による男子選手の国別・地域別対抗団体戦。
デ杯と略されることもあるらしい。

新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-ソウル・ステーション / ハンク・モブレー2007/10/03 01:10


 ほのかなファンキーさがたまらない魅力のH・モブレーの、珍しいワン・ホーン・アルバムです。
 私がリラックスしたい時に聴くこのアルバム、これからも末永く愛聴していくだろう、一枚。

 気心の知れたメンバーに囲まれ、モブレーがとても伸びやかな演奏を聴かせてくれます。


 何と言っても一番の聴きものはやはり、スローテンポのファンキー・ナンバー「SOUL STATION」
 リラックス・ムード満点のこの曲を聴いていると、自然と和んできますね。

 最後に収録された哀愁漂う「IF I SHOULD LOSE YOU」も、結構好きです。


●TOCJ-7037 ソウル・ステーション / ハンク・モブレー




●SOUL STATION / HANK MOBLEY Blue Note BST 4031

01. REMEMBER (Berlin) 5:39
02. THIS I DIG OF YOU (Hank Mobley) 6:24
03. DIG DIS (Hank Mobley) 6:07

04. SPLIT FEELIN'S (Hank Mobley) 4:53
05. SOUL STATION (Hank Mobley) 9:05
06. IF I SHOULD LOSE YOU (Robin-Rainger) 5:08

Hank Mobley (ts) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Art Blakey (ds)
Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, February 7, 1960


●おまけ●
1997年に発売されたドン・ブレイデン(ts)のリーダーアルバム、「The Voice of The Saxophone / Don Braden Octet (RCA/BMG)」の冒頭に「Soul Station」が収録されております。
オクテット(8人編成)のアンサンブルで演奏される「Soul Station」が面白く、結構聴いてます。

新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-フライト・トゥ・ジョーダン+2 / デューク・ジョーダン2007/10/04 22:10


 哀愁のピアニスト、加持がもっとも好きなバップ・ピアニスト唯一のブルーノートでのリーダー作。
 小川隆夫さん著作の本によると、オーナーのアルフレッド・ライオンはその後、続けてアルバムを録音する予定でいたそうです。
 しかしD・ジョーダンがヨーロッパに移住し、まったく連絡が取れなくなってしまったために、その計画は頓挫したようです。

 本作ではディジー・リース(tp)とスタンリー・タレンタイン(ts)の相性バツグンのフロントに支えられ、リーダーのジョーダンも素晴らしい演奏を聴かせてくれます。


 特にお薦めなのが「STARBRITE」、D・ジョーダンの素敵なイントロのあと、D・リースの艶やかなトランペットをたっぷり堪能出来ます。
 続く、S・タレンタインのソウルフルなテナーも良いですね。

 オリジナル・アルバムでは最後に収録された「SI-JOYA」、これはフランス映画「危険な関係」のテーマ曲と同じです。

 なんでも利権関係の問題で、作曲者であるジョーダンの名前がクレジットされなかったようで、印税をもらえなかったとか。
 映画内の演奏シーンでも出演しているのにサントラの演奏は、「Art Blakey & Jazz Messengers」名義であったりします。
 しかも肝心の「NoProblem」を演奏するピアニストは、ボビー・テイモンズ・・・・それは怒りますわな。


 最後に、1987年に世界初公開された2曲の未発表曲はとても良い演奏です。

 ピアノトリオによる「I SHOULD CARE」は、1973年に録音された「Flight To Denmark(Steeple Chase SCS 1011)」雰囲気そのままの演奏で驚いてしまいます。
 ブルーノートとの関係が続き、ピアノ・トリオだけで1枚アルバムを作ってくれたら・・・・間違いなく、本盤を凌ぐ大人気盤になったでしょう。惜しい!


 ここで、運にイマイチ恵まれなかった人の良いジョーダンさんのご冥福をお祈りします。
 約20年前に、新潟で行われたソロ・ライブでもらったサインは、私の宝物です。


●TOCJ-7038 フライト・トゥ・ジョーダン+2 / デューク・ジョーダン





●FLIGHT TO JORDAN / DUKE JORDAN  Blue Note BST 4046

01. FLIGHT TO JORDAN (Duke Jordan) 5:30
02. STARBRITE (Duke Jordan) 7:47
03. SQUAWKIN' (Duke Jordan) 4:58

04. DEACON JOE (Duke Jordan)
05. SPLIT QUICK (Duke Jordan) 5:09
06. SI-JOYA (Duke Jordan) - 危険な関係のテーマ 6:44

07. DIAMOND STUD (Duke Jordan) 5:03
08. I SHOULD CARE (Stordahl-Weston-Cahn) 3:50


Dizzy Reece (tp) Stanley Turrentine (ts) Duke Jordan (p) Reggie Workman (b) Art Taylor (ds)

Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, August 4, 1960


●おまけ●
「ブルーノート・ブック」の第1版で”発掘男”マイケル・カスクーナは、未発表曲として「STARBRITE」のトリオ・ヴァージョンが存在すると言及しています。
1987年の初CD化からもう20年近く経過しましたが、いつになったら公開してくれるのでしょう?


●その他のブルーノート参加作品●

★Julius Watkins Sextet Blue Note BLP 5064【1955.03】
 「Jordu」収録

★Blue Lights Volume 1&2 / Kenny Burrell Blue Note BST 81596/97【1958.06】
「Scotch Blues」収録

★Here Comes Louis Smith Blue Note BLP 1584【1958.02】
「Transition」原盤。キャノンボール・アダレイが変名で参加。

新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-テイキン・オフ+3 / ハービー・ハンコック2007/10/05 22:56


 ブルー・ノートの影の立役者、ドナルド・バードによって発見されたハービー・ハンコックの初リーダー・アルバムです。
 フロントには、勢いに乗るF・ハバードと、D・ゴードンという豪華さ。
 ビ・バップ時代の巨人、ゴードンがファンキーな曲を違和感無く演奏しているというのも、良く考えると不思議な気がします。

 まあモンゴ・サンアマリア楽団の演奏で大ヒットした、ファンキーな「WATERMELON MAN」がずば抜けて人気ですかね。
 のりの良いテーマを聴いているとつい、「Hey ! Watermelon Man !」と叫んでしまいそうになります。


 2曲目、3拍子の「THREE BAGS FULL」の雰囲気を、原盤ライナーを執筆したレナード・フェザーさんは、コルトレーンが参加した50年代「M・デイビス・クインテット」の様だと書いております。
 そういわれるとあら不思議、D・ゴードンのテナー・ソロがコルトレーンの演奏のように聴こえてきます。

 3曲目、ミドルテンポのブルース「EMPTY POCKETS」は、最後のテーマに戻る直前にセカンド・リフを挿入するなど、工夫が見られます。

 マイナー調の「THE MAZE」は、後の傑作アルバム「Empyrean Isles(Blue Note 84175)」にも通じるクールな曲です。
 ソロを盛り上げるバッキング、圧倒的なハービーのテンションの高さは凄い!の一言。

 続く緩め(笑)のファンキーナンバー「DORIFTIN'」は、箸休め的演奏なんでしょうか?ゆったりしたテンポに乗って、各人がとてもリラックスした演奏を聴かせてくれます。

 アルバムを締めくくる「ALONE AND I」は、耽美と表現するのに相応しいバラッドです。
 この曲調の路線は、これまた名盤の誉れ高い「Speak Like A Child(Blue Note 84279)」で集大成されます。


 22歳の初リーダー作で、これだけさまざまなタイプの曲を聴かせてくれるハービー・ハンコック、ホント天才ですね。


●TOCJ-7039 テイキン・オフ+3 / ハービー・ハンコック




TAKIN' OFF / HERBIE HANCOCK Blue Note BST84109

01. WATERMELON MAN (Herbie Hancock) 7:10
02. THREE BAGS FULL (Herbie Hancock) 5:26
03. EMPTY POCKETS (Herbie Hancock) 6:08

04. THE MAZE (Herbie Hancock) 6:45
05. DORIFTIN' (Herbie Hancock) 6:57
06. ALONE AND I (Herbie Hancock) 6:27

07. WATERMELON MAN -alternate take
08. THREE BAGS FULL -alternate take
09. EMPTY POCKETS -alternate take

Freddie Hubbard (tp, flh) Dexter Gordon (ts) Herbie Hancock (p) Butch Warren (b) Billy Higgins (ds)

Recorded on May 28, 1962 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.


新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-アウト・トゥ・ランチ / エリック・ドルフィー2007/10/06 12:40


 第4回発売分はこれで最後です。

 鬼才エリック・ドルフィーのブルーノート唯一のリーダー作。
 この異世界から聴こえてくるような摩訶不思議なサウンドは、強烈な磁力を持ち、我々を誘惑してきます。

 この魂を奪われる程の「危険なサウンド」の創造主は、ジャケットに写る「Will Be Back」という文字を残し未だに戻って来ません。
 彼がヨーロッパ演奏旅行中、病気の治療のために投与されたインシュリンにより、ショック死しなければ・・・・。

 次回作録音の準備までしていたアルフレッド・ライオンも、彼の訃報を聞いて、しばらく仕事が出来なくなるほどのショックを受けたそうです。


 この摩訶不思議なアルバム、曲解説する程の語彙を持ち合わせていないので、各曲についてのメモだけ記載しておきます。
 無理やり詩的な表現で誤魔化すのも、なんだしなあ。原盤解説を読んで、さらに頭が混乱してきたし・・・。


 ●「T・モンクの事を考えながら作ったんだ」という、「HAT AND BEARD」

 ●メンバーにリリカルな感じで演奏して欲しいと依頼した「SOMETHING SWEET,SOMETHING TENDER」

 ●ドルフィーが師事したフルートの巨匠の名前を付けた「GAZZELLONI」

 ●マーチ風のリズムから始まる「OUT TO LUNCH」。軽やかなリズムに乗せて我々を何処に導こうとしているのでしょう。

 ●酔っ払いの千鳥足をイメージして作曲したという「STRAIGHT UP AND DOWN」


 あと、フレディー・ハバード(tp)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、トニー・ウィリアムス(ds)、リチャード・デイビス(ds)、の四人もリーダーの指示通り、「全員対等な立場」で演奏を盛り立てます。


●TOCJ-7040 アウト・トゥ・ランチ / エリック・ドルフィー




●OUT TO LUNCH / ERIC DOLPHY Blue Note BST4163

01. HAT AND BEARD (Eric Dolphy) 8:22
02. SOMETHING SWEET,SOMETHING TENDER (Eric Dolphy) 6:00
03. GAZZELLONI (Eric Dolphy) 7:18

04. OUT TO LUNCH (Eric Dolphy) 12:05
05. STRAIGHT UP AND DOWN (Eric Dolphy) 8:19

Freddie Hubbard (tp) Eric Dolphy (as, bcl, fl)
Bobby Hutcherson (vib) Richard Davis (b) Tony Williams (ds)

Recorded on February 25, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

季節の変わり目を体で感じる時・・・・2007/10/12 06:50

紙ジャケットCDの山
加持です、今日はヨタ話なぞ書いてみましょうか。

季節の変り目は、いろいろと体の調子が悪くなりますね。

TVとか小説とかで、雨の前に登場人物が、

「昔の古傷がうずく」

とか言う事がありますよね・・・・。


アレルギー持ちの私の場合、季節の変り目で急に気温が変動すると

「目がしょぼしょぼする」
「風邪を引きやすくなる」
「鼻水が止まらなくなる」

というもろもろ(笑)の諸症状が出てきます。


そうすると、「あー季節の変り目だなー」と実感する訳です(なさけねー)。

未CD化アルバムをあえて紹介してみる-Something to Listen to / Jimmy McGriff Blue Note BST-843642007/10/16 20:48


 先月あたりから、EMIジャパンさんのRVGシリーズもようやくおもしろいアイテムが出始めましたね。
 特にリマスター年が「2007年」になっているものは要注意!

 ・・・と書いておいてなんですが、今回から10月24日までは、日本でCD化されないだろう作品を紹介していきます。
 ※季節の変り目で、ちょっと体調不良の為、記事をアップする時期(日付)がずれこんでますが、ご容赦を。


 まずはソニー・レスターのプロデュースによる、ジミー・マグリフ(Jimmy McGriff)の作品、オルガン・ジャズ!

 オルガン・ジャズという分野は、アルフレッド・ライオンがジミ-・スミスと共に開拓したと言ってもいいでしょう。
 ちょっと長くなりますが、『ブルーノートの真実/小川隆夫著(東京キララ社)』から、ボブ・クーパーさんのコメントを引用させていただきます。

 『あの時代、オルガン・ジャズは確固たるマーケットを持っていた。ソウル・ミュージックがロックやポップスと同じようなビック・マーケットになってきたんだ。その一角にオルガン・ジャズが食い込んでいた。ジャズ・ファンとソウル・ミュージック・ファンは必ずしも一致しない。その両方から支持されていたのがオルガン・ジャズだ。そして、ジミー・スミスを抱えていたブルーノートが他のレーベルを圧倒していた。』

 時が流れ、ジミー・スミスがヴァーブに移籍しまい、アルフレッド・ライオンが引退してしまった後も、ブルー・ノートは積極的にオルガン奏者を積極的に迎え入れていきました。
 その内の一人が、今回のジミー・マグリフと言う訳です。


 奇妙!なジャケット、メンバーの詳細不明、ユナイテット・アーティスツ(United Artists)時代の作品と、ナイナイづくしのこの作品。
 ・・・・で中身も酷いかというと、結構!イケル!のである。マグリフは曲によりオルガンとピアノを弾きわけますし、ソウルフルなテナーの演奏もなかなか!
 無理矢理たとえると、「ジミー・スミス+C・ベイシー・オーケストラ」的な、ハッピーな演奏が多いです。


 まずは1曲目、アップテンポの「Indiana」を聴いて下さい。
 ジミー・スミス張りのダイナミックな演奏に加え、ごきげんなソロを取るテナー(名前不明)とギター(これまた名前不明)、そして煽りまくるドラム(名前不明)と言うことなし。良い。

 ピアノをオルガンを弾き分けるソウルフルな「Malcolm's Blues」、リラックス・ムード満点の「Satin Doll」でA面(LPだから)は終了。


 続いてB面は、ちょっとシリアスな「Deb Sombo」で始まります。この曲はピアノで演奏されてます。
 タイトル曲の「Something to Listen to」は、ミディアム・テンポのこれまたR&B調のリズムに乗ったソウルフルな演奏です。
 演奏の途中でテナー(名前不明)の方が突如鳴らすホイッスルが、これまたいい感じ。

 ラストの楽しい「Shiny Stockings」、C・ベイシー・オーケストラ風に、ドラム(名前不明)さんが盛り上げます。
 テナー1本のカルテット編成で、これだけ盛り上げることが出来るとは・・・オルガン侮り難し。


 どこかでこのLPを見かけたら、お手に取ってみて下さい。
 私の手持ちは、どこかのDJ氏が放出したと思われる、コンディションの良くないカット盤。それを多少音調整して、CDに焼いて聴いてます。


●Something to Listen to / Jimmy McGriff Blue Note BST-84364

side one
01. Indiana (B.MacDonald-J.F.Hanley) 6:38
02. Malcolm's Blues (J.McGriff) 6:14
03. Satin Doll (B.Strayhorn-D.Ellington-J.Mercer) 5:59

side two
04. Deb Sombo (J.McGriff) 6:38
05. Something to Listen to (J.McGriff) 4:46
06. Shiny Stockings (E.Fitzgerald-F.B.Foster) 5:35

unknown(ts) Jimmy McGriff(org, p) unknown(g) unknown(ds)
Recorded in NYC, circa autumn 1970


祝CD化!-Introducing K.Cox and The Contemporary Jazz Quintet Blue Note [BST 84302]2007/10/18 22:21


 このCD(2 in 1)のリリースを見た時、「M・カスクーナさん、ここまで出しますか(笑)・・・・。」と思ったアルバムです。

 先日『CONNOISSEUR SERIES(米ブルーノート)』から、日本ではほぼ発売されないだろう(笑)アルバムが発売されました・・・。

 『完全ブルーノートブック』での、小川隆夫さんのコメントを読んで気になっていたこのアルバム、確か10年位前に中古LP屋さんで見つけて購入しました。
 手持ちの詳細情報は、ジャケット裏の英語解説だけ。英語と格闘してようやくまとめました。



 「新伝承派サウンド」(80年代にウイントン・マルサリスが復活させた、マイルス・クインテットサウンドをお手本とする演奏スタイル)がお好きな方は、十分に楽しめるアルバムだと思います。
 あとテナーのレオン・ヘンダーソン(Leon Henderson)は、あのジョー・ヘンダーソンの弟です。

 ファイト一発!1曲目のドラムパターンを良く聴いていると、「Miles Smiles」の影響が大きいと思われます。
 また、名門レーベルの録音ということで気合が入ったのか、バラエティに富んだ全曲、書下ろしの新曲だそうでです。


 当時のブルーノートで、兼任プロデューサーをつとめていたピアニストのデューク・ピアソン(Duke Pearson)はデトロイトのDJ、ジャック・スプリンガー(Jack Springer)からこのバンドを紹介されたそうです。
 このバンドの演奏を聴いたピアソンは早速、現地デトロイトで録音を行ったそうです。

 おもしろいことにこのアルバム、ルディー・ヴァン・ゲルダー・スタジオで再録音されているんですね。
 手持ちのLPには「VAN GELDER」の刻印が押されており、音はヴァン・ゲルダー・サウンドそのもの。結構良い音をしてます。


 1枚目を聴いた第一印象は、もろ60年代「マイルス・デイヴィス・クインテット」のサウンド!
 特に、ダイナミックなドラムと、印象的なトランペットのフレーズを聴いていると、「皆さん、本当に好きなんだねー」と声を掛けたくなる位の傾倒ぶり。

 ちなみにマイルスのアルバムでテイストが近いものは、1966年10月録音の「Miles Smiles / Miles Davis (Columbia CL 2601)」や、1966年06月録音の「Nefertiti / Miles Davis (Columbia CS 9594) 」あたりでしょう。


 まずA面は、緊張感たっぷり、劇的な展開が魅力の「Mystique」、叙情感溢れる「You」、当時流行りのダンス・ビートにのせた軽快な曲「Trance Dance」、怪しい雰囲気を孕んだアップ・テンポの「Eclipse」と続きます。

 B面に行きますと複雑なテーマが印象的な「Number Four」、テーマ部からもろマイルス風のトランペットが炸裂するバラッドの「Diahnn」でアルバムは終了します。


 アルバムを2ヶ月近く集中して聴いて思うのは、「あと3年早く、このバンドが登場していればなあ・・・。」の一言に尽きます。
 3年前(1965年)にはあの名盤、「処女航海(BN84195)」が録音されています。


 オーネット・コールマンを中心としたフリーの嵐が吹き荒れ、ソウル・ミュージックや、よりポップで踊れるアルバムが求められていただろう時代に、あの「新伝承派風サウンド」では・・・・まあ玄人受けはしても、売れなかったでしょうね。

 時代の流れに乗れなかった「隠れ名盤」を、2007年にCDで手軽に聴けるようになったことを、素直に喜びたいと思います。


●Introducing Kenny Cox and The Contemporary Jazz Quintet
Blue Note/United Artists BST 84302

side one
01. Mystique (K.Cox) 04:40
02. You (D.Durrah) 05:25
03. Trance Dance (K.Cox) 06:00
04. Eclipse (L.Henderson) 05:47

side two
05. Number Four (C.Moore) 10:45
06. Diahnn (L.Henderson) 08:35

Charles Moore(tp) Leon Henderson(ts) Kenny Cox(p) Ron Brooks(b) Danny Spencer(ds)
Recorded on December 9,1968 at United Sound System, Detroit,MI

Produced by Duke Pearson
Re-Recording by Rudy Van Gelder


●メンバー紹介(LP裏の解説より)●

◆ケニー・コックス(Kenny Cox)

 1940年11月08日ミシガン州デトロイト生まれ。
 8才からピアノを習い(トランペットも)、15才から地元でプロ活動を開始。
 途中、ニューヨークに行き、歌手のエッタ・ジョーンズ(Etta Jones)のツアー・バンドに参加。
 1964年にデトロイトに戻り、ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)、ロイ・ヘインス(Roy Haynes)、ローランド・カ-ク(Roland Kirk)らと共演。

 好きなピアニストは、バド・パウエル(Bud powell)、バリー・ハリス(Barry Harris)、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)。
 ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)からも強く影響されているとの事。

◆チャールス・ムーア(Charles Moore)

 録音当時(1968年)28才でアラバマ州出身。
 前は、「Detroit Contemporary Five (D.C.Five)」というアヴァンギャルドのグループを率いていたそうです。
 60年代におけるマイルス・デイヴィスの演奏スタイルから、強い影響を受けているようです。

◆レオン・ヘンダーソン(Leon Henderson)

 1940年12月11日ケンタッキー州リマ生まれで、15人兄弟の末っ子。
 兄であるジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)と同じく、ケンタッキー州立大学の出身。

◆ロン・ブルックス(Ron Brooks)

 録音当時(1968年)33才でイリノイ州エヴァンストン(Evanston)出身で、ミシガン州アン・アーバー(Ann Arbor)在住。
 ミシガン州立大学在学時に、ボブ・ジェームス(Bob James)トリオに在籍していたそうです。

◆ダニー・スペンサー(Danny Spencer)

 1942年04月17日ミシガン州イシュペニング(Ishpeming)出身。
 3年前(1965年)に、ロン・ブルックスと共にヨーロッパに渡り、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)、アート・ファーマー(Art Farmer)、ルネ・トーマス(Rene Thomas)ら刺激的なミュージシャンと共演を重ねる。





安定したバンドサウンドが魅力!- Multidirection - Kenny Cox and The Contemporary Jazz Quintet Blue Note [BST 84339]2007/10/20 16:28


 『CONNOISSEUR SERIES(米ブルーノート)』からCD(2 in 1)発売された、隠れ名盤ご紹介の続きです。


 2枚目のアルバムのテイストを無理矢理マイルスのアルバムに例えると、1966年06月録音の「Nefertiti / Miles Davis (Columbia CS 9594) 」に近いと思われます。
 「Nefertiti」程、耽美的雰囲気は無いですけどね。

 アルバムの統一感を高める為か、K・コックスとC・ムーアが3曲づつ持ち寄ってます。
 1枚目に比べ、バンド固有のサウンド・カラーが出て来ており、特にリーダーの美しいピアノと、トランペットのC・ムーアの無茶しない!安定した演奏が嬉しい限りです。

 私自身は、プロデューサがフランシス・ウルフに変わったこの2枚目の、安定したサウンドの方が好きです。


 なお手持ちのLPには1枚目同様、「VAN GELDER」の刻印が押されており、安心して聴くことが出来ます。


 まずA面、K・コックス自身の作曲したハービー・ハンコック風の叙情感溢れる「Spellbound」で始まります。

 次に、マイナー調アップテンポ・ナンバー「Snuck In」、ちょっと前乗りなビートが心地よい「Sojourn」と続きます。


 B面の最初は、タイトル曲の「Multidirection」は、ちょっとマイルスが演奏した「Freedom Jazz Dance」を彷彿とさせる曲です。

 次のミディアムテンポの「What Other One」はワルツ(3拍子)のリズムに乗って、C・ムーアのもろマイルス風トランペットが炸裂します。ドラムのD・スペンサーも良いです。
 あ、ちょっとW・ショーター風味のL・ヘンダーソンのテナーも良いですね。

 最後の「Gravity Point」も、緊張感溢れる良い演奏です。


 前回も書きましたが、このアルバムが再発されるとは・・・私にとっては「晴天の霹靂(Out Of The Blue)」な出来事でした。
 あとは、4枚組オムニバス盤CDにだけ収録されている隠れた名盤、ホレス・シルバーの「Silver'N'」シリーズ4枚を、BOXで良いのでCD化していただけないでしょうか。

 EMIミュージック・ジャパンの「ブルーノート・クラブ」限定復刻とかでもいいですから。行方様、よろしくお願い致します。


●Multidirection / Kenny Cox and The Contemporary Jazz Quintet
Blue Note/United Artists BST 84339

side one
01. Spellbound (K.Cox) 5:18
02. Snuck In (C.Moore) 6:03
03. Sojourn (K.Cox) 6:40

side two
04. Multidirection (C.Moore) 9:54
05. What Other One (K.Cox) 5:00
06. Gravity Point (C.Moore) 6:10

Charles Moore(tp) Leon Henderson(ts) Kenny Cox(p) Ron Brooks(b) Danny Spencer(ds)
Recorded on November 26,1969 at G.M.Recording Studios, Detroit,MI

Produced by Francis Wolff