新・ブルーノートRVGコレクション第7回より-ノー・ルーム・フォー・スクエアーズ+2 - ハンク・モブレー2008/01/05 07:27

NO ROOM FOR SQUARES  - HANK MOBLEY  Blue Note BST-84149

 ハンク・モブレーの好きな作品を挙げよ!と言われれば、真っ先に思い浮かぶのはこの作品です。
 諸兄が思い浮かべるであろう『Soul Station(BST-84031)』や、『Dippin'(BST-84209)』よりもワタシは好きです、ハイ。


 嬉しい事に、12月に発売された『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100/小川隆夫(河出書房新社)』でも、この作品が紹介されているんですね。
 コメントはジョニー・グリフィン(1986年)、ジャボン・ジャクソン(1997年)、スタンリー・タレンタイン(1999年)の3人です。

 まずは、ジョニー・グリフィンのコメントはこんな感じ。

 「この演奏はいつものハンクと印象が違う」
 「この演奏はふたり(注1)による過激なプレイの最上位に位置するものでじゃないかな?」
 注1:リー・モーガン&ハンク・モブレーの、通称「M&Mコンビ」の事を指しています。


 次にブルーノートでは後輩にあたるスタンリー・タレンタインは、モブレーの演奏スタイルを色々分析してくれています。

 「スタイルはわたしと似ていたかもしれない」、「ハンクのプレイが柔軟だってことだ」
 「ハンクはスタイリストだった。低音に魅力のある独特のスタイルでね」
 「演奏面ではずいぶん参考にさせてもらった」

 ・・・あとコメントの中で、ピアノのアンドリュー・ヒル(Andrew Hill)のことを、「面白い」と言っていた事も嬉しかったりします(笑)。



 さあて、このアルバムが「好き」すぎて(笑)曲のコメントに困ったので、長々と小川さんの著作を引用させてもらいましたが、そろそろ行きますか(笑)。

 まずリー・モーガン(Lee Morgan)とアンドリュー・ヒル(Andrew Hill)の参加した曲ですが、「アヴァンギャルド・ファンキー」とでも名付けたい程、刺激的な演奏です。
 気心の知れたモーガンを相棒にして、アヴァンギャルド風味満点のヒルのピアノと、フィリーの挑発的なドラムが絡む・・・マイペースのハンクでも、いつも以上に盛り上がらない訳、ナイですよね(笑)。

 1曲目「THREE WAY SPLIT」は、ヒルとフィリーによるオドロオドロ(笑)しいイントロから緊張感漂っていいですね。
 テーマの後、ソロに入るモブレーも、普段よりも刺激的なフレーズを綴って行きます。2番手に登場するモーガンの破天荒気味なソロも良し。
 3番目にフィリー・ジョー・ジョーンズの長いドラム・ソロ、これまた珍しいですねー。あ、この曲ヒルのソロ無かったんだ。


 2曲目の耽美的なバラッド「CAROLYN」は、リー・モーガンの作品です。
 ソロにおけるモブレーのマイルドな音色もいいですね。続くアンドリュー・ヒルの耽美的な短いソロ、曲調にピッタリ。
 最後に登場するモーガンも、短いながらも貫禄たっぷりで吹ききります。

 タイトル・トラック「NO ROOM FOR SQUARES」は、何故かニューヨークの通りを風を切って颯爽と歩くモブレーの姿が思い浮かびます。
 こういうヒップな演奏スタイルが一番ハマルのは、モーガンですね。ソロ・フレーズが「どうだ、俺、ヒップだろう?」と言ってるみたい(笑)。

 何処かで聴いたことのあるような覚え易いメロディーを持つ、ファンキーな「ME 'N YOU」はモーガンの作品。
 聴き所は何と言ってもモーガンのソロ。大ヒット作『The Sidewinder(BST-84157)』で炸裂するフレーズが満載です。



 残り2曲は、ドナルド・バードとハービー・ハンコックが参加したセッションからですね。

 バード&ハービーのコンビが、モード調の曲を演奏するマイルス・バンドの臭いをプンプン(笑)させる「UP A STEP」。
 一転してアップテンポ「OLD WORLD, NEW IMPORTS」は、ちょっと時代が戻ってハード・バップ然とした演奏です。



 なお今回のCDには、「CAROLYN」と「NO ROOM FOR SQUARES」の別テイクが追加収録されてます。
 どちらの曲も本テイクと比べて遜色無い出来なので、聴き比べてみるのも面白いかと思われます。


TOCJ-7068 ノー・ルーム・フォー・スクエアーズ+2 / ハンク・モブレー

●NO ROOM FOR SQUARES / HANK MOBLEY Blue Note BST-84149

01. THREE WAY SPLIT (Hank Mobley) *2 7:47
02. CAROLYN (Lee Morgan) *2 5:28
03. UP A STEP (Hank Mobley) *1 8:29

04. NO ROOM FOR SQUARES (Hank Mobley) *2 6:55
05. ME 'N YOU (Lee Morgan) *2 7:15
06. OLD WORLD, NEW IMPORTS (Hank Mobley) *1 6:05

07. CAROLYN (Lee Morgan) *2 -alternate take- 5:33
08. NO ROOM FOR SQUARES (Hank Mobley) *2 -alternate take- 6:43

*1
Donald Byrd (tp) Hank Mobley (ts) Herbie Hancock (p) Butch Warren (b) Philly Joe Jones (ds)
Recorded on March 7, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

*2
Lee Morgan (tp) Hank Mobley (ts) Andrew Hill (p) John Ore (b) Philly Joe Jones (ds)
Recorded on October 2, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.




A.ヒル追悼-関連ブログのご紹介2007/05/03 01:35

新潟市の花絵-20070430

 加持です。ここでは、A.ヒルに関した記事を書いた方のブログを紹介します。
 正直、トラックバックした後の反応が怖いですが・・・・。

 goo RSSリーダーで検索すると、日本国内で4名の方がアンドリュー・ヒル関連の記事を書いていたので安心しました。
 それぞれ、加持とは別の視点で書いておられるので、おもしろく読ませてもらいました。本当にありがとうございます。



●サイト:Life of a wanderer (ブログの主は非表示です)
人生って。 2007年04月24日(火)
http://jujusound.blog96.fc2.com/blog-entry-13.html
 「コメント欄」も「トラックバック」も無いので、リンクだけ貼っておきます。  内容は「ヒルの死」に関連した結構哲学的な内容なんですが、面白く読めます。

●サイト:JAZZを聴きながら(h-babu0717さんのブログです)
『黒い情念』が逝く 2007年04月22日
http://blog.goo.ne.jp/h-babu0717/e/8012d246842dddd962ffdae0ba9c5d44
 A.ヒルの詳細なバイグラフィーが読めるのが有難いです。
 ANDREW !!! / ANDREW HILL(1964年6月25日録音)のCD紹介も読めます。

●サイト:ないときにはない(nakamanmanさんのブログです)
アンドリュー・ヒル逝去 2007/04/22 10:55
http://nakamanman.iza.ne.jp/blog/entry/156775
 Time Lines / Andrew Hill (Blue Note)のジャケットが紹介されています。

●サイト:へなちょこカメラマンは今日も昼寝 (aldo-ishikawa さんのブログです)
SO IN LOVE/ANDREW HILL 2007-04-11 07:17:57
http://ameblo.jp/aldo-ishikawa/entry-10030478655.html
 ここで「So In Love」のオリジナル・ジャケットを拝めます。
 私もLPで持ってたんですが、CD購入と同時に手放したので・・・有難いです。




「Dusk」 -最後のA.ヒル追悼(8)2007/05/02 06:20

Dusk - Andrew Hill [Palmetto Records]

 加持です。まずはA.ヒル関連の情報サイトで新しいものを。これが最後ですね。

●All About Jazz での追悼コメントです(オフィシャルサイトからのリンク)。
http://www.allaboutjazz.com/php/news.php?id=13551
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト(穏やかなヒルの笑顔が素敵です)。
http://www.andrewhilljazz.com/


●近年、アンドリュー・ヒルが受賞した賞の数々(公式HPより)
  • Jazz Journalist Composer of Year Awards for 2000, 2001, 2003, 2006
  • "Time Lines" Down Beat Album of the Year 2006
  • Playboy Jazz Artist of the Year 2006
  • "Dusk" Down Beat Album of the Year 2001
  • Down Beat Winner Critics Poll Jazz for 2000 & 2001
  • First Doris Duke Foundation Award for Jazz Composers


 アンドリュー・ヒルの公式サイトのTOPページには、ヒルが近年受賞した数々の賞を掲載しています。その中に「Dusk」の文字が・・・2001年ダウン・ビートの「Album of the Year」だったようですね。
 ただし、日本の主要ジャーナリズムは大きくは掲載しなかった気がします・・・最新盤はすべて、輸入盤でしたから。

 5月(あるいは6月)発売の主要ジャズ誌は、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が惚れ込んだA.ヒルの死去を、大々的に報道することはまず無いでしょう・・・死亡記事も多分、読売新聞が掲載しただけのようですし。

 うーん。なんだかネガティブ気味になってきたので、気持ちを切り替えて、と。


 7枚目は、2000年に発売されたアルバム、「Dusk (Palmetto Records)」です。

 名作「Point Of Departure (BST 84167)」の35周年記念盤といった感じの編成ですが、以前の「過激さ」は薄まりアルバム全体で「穏やか」な印象を受けます。

 あと、メンバー全員がA.ヒルのコンセプトを完全に体得しているようで、ヒルと一体化したような演奏を聴かせるのが面白いですね。


 そんな中、アップ・テンポの「Ball Squre」では、かつての「ブルーノート時代」を彷彿とさせるねじれた曲調と、曲のパート毎に異なる演奏を繰り広げます。やはり、いいですねーこの感じ。

 あと「Sept」では、中近東ムード漂うエキゾチックな演奏が異国への郷愁を誘いますし、タイトル通り変拍子の「15/8」では最初、ホーン陣のアンサンブルをバックに「Speak Like A Child / H.Hancock (BST84279)」風の抒情たっぷりな演奏を聴かせてくれます。ただし、ホーン陣がソロを取り始める後半は、かなりフリー気味な演奏になりますが・・・。

 ソロ・ピースの「Tough Love」では、セロニアス・モンク(p)が自身ソロ・アルバムで行った様に、自作品を本当に慈しむかのように演奏しています。


●Dusk / Andrew Hill Palmetto Records PM 2057

01. Dusk (Andrew Hill)
02. ML (Andrew Hill)
03. Ball Squre (Andrew Hill)
04. Tough Love (Andrew Hill) *
05. Sept (Andrew Hill)
06. T.C. (Andrew Hill)
07. 15/8 (Andrew Hill)
08. Focus (Andrew Hill) *

Ron Horton (tp) Marty Ehrlich (as) Greg Tardy (ts, cl, fl) Andrew Hill (p) Scott Colley (b) Billy Drummond (ds)
Recorded on September 15(sextet) & October 27(* solo), 1999 at Maggie's Farm


 ・・・最後になりましたがここでもう一度、A.ヒルの冥福をお祈りしたいと思います。

 独特の個性を持ち60年代ジャズ・シーンに登場した彼の作品群、私はそれらのアルバムと一生付き合って行くでしょう・・・。
 アマゾンを検索すると6月には、ブルーノートから未発表音源がCD化されるみたいなので楽しみです。その内、未発表音源のBOXセットとか出るか・・・M.カスクーナさんお願い!


●「Dusk」


「So In love」-A.ヒル追悼(7)2007/05/01 03:22

So In Love - Andrew Hill [Warwick]

 加持です。まずはA.ヒル関連の情報サイト再掲です。しつこいかなー。

●米ブルーノートの公式HP。ニュースページにアンドリューへの追悼文を掲載。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト(豊富なライブ音源などを無料視聴OK!)。
http://www.andrewhilljazz.com/


 6枚目は、シカゴ時代に録音された初リーダー・アルバム、「So In Love (Warwick)」です。
 このアルバムでは、ヒルの耽美な演奏を堪能出来ます。ややアーマッド・ジャマール(p)風、カクテル・ピアニスト的演奏ではありますが・・・・。

 7曲中オリジナルは2曲だけです・・・しかし、スタンダード・ナンバーを演奏しても、何故かヒルのオリジナルに聴こえてしまいます。
 ・・・しかし、この当時からオリジナリティーに溢れていたんですね。

 ヒルもこのアルバムを録音して、「何を弾いてもオリジナルに聴こえるなら、いっそのこと全部オリジナルを演奏しよう。」と思ったのかもしれませんね。


 中でも一番強烈にヒルの個性を感じされるのが、有名スタンダード曲の「Body And Soul」です。
 ここまでオリジナリティーに溢れる演奏が出来るなら、ホレス・シルバー(p)ドナルド・バード(tp)のように、もう少しテーマを崩して演奏し、「別名」を付けて「自作曲」として申請してもよさそうなものですが・・・。


 だいたいこの位で、廃盤になっていそうなアルバムは掲載出来ました。あとは、手持ちの最近発売されたアルバムですが、さて何にするか・・・・。

●So In Love / Andrew Hill Fresh Sound FSR-CD 322 [Warwick LP-2002]

01. So In Love (Cole Porter)
02. Chiconga (Andrew Hill)
03. Body And Soul (Green/Heyman/Sauer/Eyton)
04. Old Devil Moon (B.Lane/E.Y.Harburg)
05. Spring Is Here (R.Rodgers/L.Hart)
06. Penthouse Party (Andrew Hill)
07. That's All (B.Haymes/E.Brandt)

Andrew Hill (p) Malachi Favors (b) James Slaughter (ds)
Reocrded in Chicago, 1956


●「So In Love」2004 Fresh Sound 盤
So in Love
 


「spiral」-A.ヒル追悼(6)2007/04/30 02:22

Spiral - Andrew Hill

 加持です。まずはA.ヒル関連の情報サイト再掲です。

●米ブルーノートの公式HP。ニュースページにアンドリューへの追悼文を掲載。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト(豊富なライブ音源などを無料視聴OK!)。
http://www.andrewhilljazz.com/


 さて5枚目は、ブルーノートを離れ、1974~1975年に録音された「Spiral [freedom]」です。
 このアルバム、しばらくするとヒルの「隠れ名盤」と呼ばれるようになるかも知れません・・・結構聴けます。


 演奏曲目はブルーノート時代同様、大半がヒルのオリジナルで占められています。
 オリジナルの曲調は、「60年代のアバンギャルド派のあの怒りを爆発させたかのようなジャズ(ライナー・ノートより転載)」そのもの、熱い演奏です。


 ・・・・あとは、何故か1曲だけスタンダードを演奏しています。

 「ヒルがたどってきた境遇とはうらはらに心を洗われるようなすがすがしい旋律、平和の響きに満ちみちていた。(ライナー・ノートより転載)」

 そんな演奏を、リー・コニッツ(as)とのデュオによる「invitation」で聴くことが出来ます。ホント清々しい気分になりますね。


 なおライナー・ノートの執筆者は、児山紀芳さんです。
 ライナーにはその他、ヒルの「生い立ち」から1970年に入ってからの「黒人活動家」としての行動までをコンパクトにまとめているので、興味のある方は中古CD屋さんをお探し下さい。


●Spiral / Andrew Hill Freedom

01. Tomorrow (Andrew Hill) *3
02. Laverne (Andrew Hill) *1
03. The Message (Andrew Hill) *1
04. Invitation (Paul Francis Webster/Bronislaw Kaper) *2

05. Today (Andrew Hill) *3
06. Spiral (Andrew Hill) *1
07. Quiet Dawn (Andrew Hill) *3

*1 Ted Curson (tp, Flh, Picc-tp) Lee konits (ss, as, ts) Andrew Hill (p) Cecil McBee (b) Art Lewis (ds)
*2 Lee konits (ss, as, ts) Andrew Hill (p)
*3 Robin Kenyatta (as) Andrew Hill (p) Stafford James (b) Barry Altschul (ds)

Recorded on December 20, 1974 and January 20, 1975 at C.I. Recording Studios, NYC


●「Spiral」1999 UK盤
※アマゾンで超!コレクターズ価格のみ
Spiral
 


「Eternal Spirit」 -A.ヒル追悼(5)2007/04/29 01:20

Eternal Spirit - Andrew Hill  [Manhattan Blue Note()]

 加持です。まずはA.ヒル関連の情報サイト再掲です。

●米ブルーノートの公式HP。ニュースページにアンドリューへの追悼文を掲載。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト(豊富なライブ音源などを無料視聴OK!)。
http://www.andrewhilljazz.com/


 4枚目は新生ブルーノートから発売された「Eternal Spirit」です。
 まずヒルのデビュー当時に競演しているB.ハッチャーソン(vibs)の参加がうれしいですね。
 あとグレッグ・オズビー(as)の演奏、意外とハマッてます。ちょっとE.ドルフィー(as, bcl, fl)みたいで・・・。

 「マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル'86」から約3年後の1989年、このアルバムでA.ヒルは新生ブルーノート復帰を果たしました。
 ここでようやく、(1987年に死去した)アルフレッド・ライオン最後の願いが叶えられた訳です・・・。


 ・・・実は3曲目の「Samba Rasta」は、何故かここ1ヶ月集中的に聴きたくなったA.ヒル(p)のナンバーです。今思い起こすと、ヒルの迫り来る死に感応しているようで怖いですが・・・。

 曲調は、レゲエとサンバをフュージョン(混合)した「哀愁のラテン・ナンバー」なのかな?「Samba Rasta」はシングル盤を切って発売したい程、キャッチーな(憶え易い)テーマですね。何度聴いても飽きが来ないのは何故でしょうか・・・。

 さらにハッチャーソンとヒルが、ソロで結構泣かせるフレーズを聴かせてくれます。


 欲を言えば全編、「Samba Rasta」調の曲で固めて欲しかった・・・A.ヒルの耽美な演奏を好む方なら、この1曲だけ聴く為に購入しても十分おつりが来るアルバムだと思います。


●Eternal Spirit / Andrew Hill Blue Note CDP 7 92051 2

01. Pinnacle (Andrew Hill)
02. Golden Sunset (Andrew Hill)
03. Samba Rasta (Andrew Hill)
04. Tail Feather (Andrew Hill)
05. Spiritual Lover (Andrew Hill)
06. Bobby's Tune (Andrew Hill)

07. Pinnacle (Andrew Hill) - Alternate Take -
08. Golden Sunset (Andrew Hill) - Alternate Take -
09. Spiritual Lover (Andrew Hill) - Alternate Take -

Greg Osby (as) Bobby Hutcherson (vibs) Andrew Hill (p) Rufus Reid (b) Ben Riley (ds)
Recorded on January 30(4,6-9) & 31(1-3,5), 1989 at Rudy Van Gelder Studio, NJ


●「Eternal Spirit」US盤(1989)
※アマゾンでコレクターズ価格のみ
Eternal Spirit
 


「Grass Roots」-A.ヒル追悼(4)2007/04/28 08:43

Grass Roots - Andrew Hill  BST84303

 加持です。まずはA.ヒル関連の情報サイト再掲です。

●米ブルーノートの公式HP。ニュースページにアンドリューへの追悼文を掲載。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト(豊富なライブ音源などを無料視聴OK!)。
http://www.andrewhilljazz.com/


 3枚目は「Grass Roots(BST 84303)」です。バラエティーに富んだこのアルバム、ヒルの魅力満載の1枚です。
 しかも、フロント陣はL.モーガン(tp)と、B.アービン(ts)!


 その中でもお勧めの1曲が「Mira」です。
 (原盤)ライナーノートを読むと、ジャズとラテンが融合(フュージョン)した曲と書いてあります。
 ウキウキするようなリズム・パターンに乗って、ヒルの珍しく軽快なソロが堪能できます。

 これは、アッパー・ウエスト・サイドに住むイタリア移民の子供達の叫び声「Mira !」からヒントを得て造った曲で、イタリア語で「見ろ!」など、注意を喚起する言葉だそうです。
 そういえばH.ハンコック(p)の大ヒット曲「Watermelon Man」も、スイカ売りの掛け声をヒントに造ったものだそうですし・・・。


 穏やかな雰囲気漂う1曲目「Grass Roots」は、「Eternal Spirit(1989年のブルーノート復帰作)」にダイレクトに繋がる演奏が聴ける1曲です。
 続くアップテンポの「Venture Inward(自身の探求?)」では、ヒルはもちろんのこと、L.モーガン(tp)の短いながらも思い切りのよいソロが楽しめます。

 ゴキゲンなノリの「Soul Special」では、L.モーガン(tp)がお得意のハーフ・バルブを交えたジャズ・ロック調ソロをたっぷり聴かせてくれます。

 ラストの「Bayou Red」は、マイナー調3拍子のジャズ・ワルツですが、ここではB.アービン(ts)が、アラビア音階をうまく使い、T.ブルックス(ts)のようにエキゾチックなソロを聴かせてくれます。


 1997年にステファノ・ボラーニ(p)が参加したバンド(Up Up with The Jazz Convention[Schema Records SCCD-306])で、「Mira」がカバーされたりすることを考えると本当、最初からこの路線で行けばもっと売れたのに・・・・・しかし、ヒルの登場した時代が悪かったんでしょうかねー。

●Grass Roots / Andrew Hill Blue Note BST 84303

01. Grass Roots (Andrew Hill)
02. Venture Inward (Andrew Hill)
03. Mira (Andrew Hill)

04. Soul Special (Andrew Hill)
05. Bayou Red (Andrew Hill)

Lee Morgan (tp) Booker Ervin (ts) Andrew Hill (p) Ron Carter (b) Freddie Waits (ds)
Recorded on August 5, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, NJ


● CD additional tracks ●
06. MC (Andrew Hill)
07. Venture Inward (Andrew Hill) - First Version -
08. Soul Special (Andrew Hill) - First Version -
09. Bayou Red (Andrew Hill) - First Version -
10. Love Nocturne (Andrew Hill)

Woody Shaw (tp) Frank Mitchell (ts) Andrew Hill (p) Jimmy Ponder (g) Reggie Workman (b) Idris Muhammad (ds)
Recorded on April 19, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, NJ


●「Grass Roots(BST 84303)」US盤(connoisseur cd series)
※アマゾンでコレクターズ価格のみ
Grass Roots
 


「Point Of Departure (BST84167)」 -A.ヒル追悼(3)2007/04/27 15:42

Point Of Departure - Andrew Hill  (BST4167)

 加持です。最初に、A.ヒル関連の情報サイトを再掲します。

●米ブルーノートのHPです。ニュースページにアンドリューへの追悼文が掲載されています。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト。豊富なライブ音源を無料で視聴できます。
http://www.andrewhilljazz.com/


 2枚目は、E.ドルフィー(Eric Dolphy)を含むオールスターで録音された「Point Of Departure(BST8467)」です。
 意外とあっさりとした感じな仕上がり感は、T.ウィリアムス(Tony Williams)の若さ一杯!溌剌としたドラムのおかげでしょう。

 しかし良く考えると、ドラムで印象がガラっと換わるのがA.ヒル(p)の作品群なんですよね。

 例えば、「Judgment !(BST4159)」 でのE.ジョーンズ(ds)は、J.コルトレーン(ts)バンドでの演奏同様、音の隙間(空間)を埋めようとするので、「重苦しさ」に加え「暑苦しさ」が増して気楽に聴きにくいこと・・・。

 つまり、A.ヒルと演奏する場合、音の隙間を埋めず、意図的に生み出す演奏をしないと、駄目な(聴きにくい)様です。


 あと、フリー寄りの演奏が得意なE.ドルフィー(as, bcl, fl)の参加により、1枚目より過激さが増しています。

 中でも1曲目、トニーの叩き出す変幻自在のリズムが独特の雰囲気を醸し出す「Refuge」が、A.ヒルが前に出ておもしろい演奏だと思います。

 5曲目の「Dedication」は耽美寄りの演奏なのですが、E.ドルフィーのバス・クラリネットによる咆哮一発で、過激な方向に・・・(~~)。


 しかしこのアルバム、E.ドルフィー(as, bcl, fl)のバス・クラによる咆哮と、T.ウィリアムス(ds)の過激な演奏だけ耳に残りますね(~~)。

 まあ、ブルーノート新主流派オールスターズによる「アンドリュー・ヒル作品集」というのが、正しいアルバム解釈になりますか・・・・。


●Point Of Departure / Andrew Hill Blue Note BST84167

01. Refuge (Andrew Hill)
02. New Monastery (Andrew Hill)
03. Spectrum (Andrew Hill)
04. Flight 19 (Andrew Hill)
05. Dedication (Andrew Hill)

CD additional tracks
06. New Monastery (Alternate Take)
07. Flight 19 (Alternate Take)
08. Dedication (Alternate Take)

Kenny Dorham (tp) Eric Dolphy (as, bcl, fl) Joe Henderson (ts) Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Tony Williams (ds)
Recoreded on March 21, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, NJ


●「Point Of Departure」紙ジャケット日本盤(RVG Edition)
ポイント・オブ・ディパーチャー+3(完全限定生産/紙ジャケット仕様)
●「Point Of Departure」日本盤(1994年-東芝EMI)
ポイント・オブ・ディパーチャー

「黒き炎 Black Fire (BST84151)」-A.ヒル追悼(2)2007/04/26 20:41

Black Fire - Andrew Hill Blue Note BST84151

 加持です。
 20日に亡くなったA.ヒル(p, compser)追悼で聴いていたCD。よく棚を見ると何枚か未聴CD・LPを見つけました。
 いやあ、ブルーノート以外(Steeple Chase 盤とか)に結構持っていたんだな・・・。

 ではアルバム紹介に入りますがその前にA.ヒル関連の情報サイトを再掲。

●米ブルーノートのHPです。ニュースページにアンドリューへの追悼文が掲載されています。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト。豊富なライブ音源を無料で視聴できます。
http://www.andrewhilljazz.com/


 1枚目はやはり、「Black Fire(BST84151)」です。大好きな作品なので、一番紹介し難いのですが・・・。

 「ブルーノートが見出した独特な才能=アンドリュー・ヒルの最高作(TOCJ-9585 の帯 より)」
 で、何が最高なのか・・・・これは、「一番聴きやすい」と置き換えた方が理解し易いと思います。


 このアルバムでは、A.ヒルの持つ二面性が程好くミックスされています。
 つまり、屈折したテーマを持つ1曲目の「Pumpkin」で聴けるフリーギリギリの過激さと、トリオで演奏される5曲目の「Tired Trade」で聴ける、H.ハンコック(p)にも通じる耽美な部分です。

 どちらの要素も素晴らしいと思うのですが、A.ヒル(あるいはオーナーのアルフレッド・ライオン)が選択した方向は前者の「過激さ」でした。
 その結果、「名声」は得られましたが、「富」からは見放された訳です・・・・。


 あと注目すべき点は、A.ヒルと「同じコンセプトで演奏出来る」ミュージシャンが揃っている事でしょう。

 A.ヒルの演奏の特徴の一つは、リズムを「繋げる」のではなく意図的に「ザクザク刻む(繋げない)」事なのですが、このアルバムでドラムのロイ・へインズ(Roy Haynes)と、テナーのジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)は彼のコンセプトを十分に理解し、ビートをサデスティクに切り刻んでいます。


 また全員がソロをやっているかのような、「主従なき」演奏スタイルは、ビル・エバンス(p)とスコット・ラファロ(b)が試みた「インタープレイ」に通じるのでは・・・。

 ロイ・へインズ(ds)が曲中ずっとまともな4ビートを刻まない理由は、ビル・エバンス(p)・トリオの”インタープレイ”を、「ピアノとベース」ではなく「ピアノとドラム」で試みているから!だと思われます。

 なおこの”インタープレイ”を、「ピアノとテナー」でやっているのが6曲目の「McNeil Island」ですね。



●Black Fire / Andrew Hill Blue Note BLP 4151

01. Pumpkin (Andrew Hill) *1
02. Subterfuge (Andrew Hill) *2
03. Black Fire (Andrew Hill) *1

04. Canternos (Andrew Hill) *1
05. Tired Trade (Andrew Hill) *2
06. McNeil Island (Andrew Hill) *3
07. Land Of Nod (Andrew Hill) *1


*1 Joe Henderson (ts) Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Roy Haynes (ds)
*2 Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Roy Haynes (ds)
*3 Joe Henderson (ts) Andrew Hill (p) Richard Davis (b)

Recored on November 9, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, NJ


 

●「Black Fire」US盤(RVG Edition)
Black Fire
●「Black Fire」日本盤(1994年-東芝EMI)
ブラック・ファイアー


二人のジャズ伝道師 「アンドリュー」と「ハービー」-アンドリュー・ヒル(p) 追悼2007/04/25 22:41

Black Fire & Takin' Off & No Room For Squre

 加持です。今月20日に亡くなったアンドリュー・ヒル(Andrew Hill)を追悼するために、手持ちCDを全て聴き終えました。
 彼の残したCDを紹介する前に、序章として「ある物語」をご紹介します・・・つたない文章ですが。



 「その昔、ドイツ生まれのアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)という、ジャズの教えを熱心に布教している男がおりました。

 彼の下には、アート・ブレイキー(Art Blakey)を筆頭に、自らジャズ・メッセンジャーズ(Jazz Messengers)と名乗る熱心なジャズの伝道師達がおり、事ある毎に教会(スタジオ)に集い、祈り(演奏)を捧げていました。

 布教活動も活発になってきたある日、ライオンの所に、新たにシカゴから、2人のジャズ伝道師がやって来ました・・・。


 一人は牧師の息子、ドナルド・バード(Donald Byrd)が連れてきたハービー・ハンコック(Herbie Hancock)。もう一人は、ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)が連れてきた、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)です。
 ちなみにこの二人、同じような演奏をするピアニストでした。


 しかし要領の良いハービーは、すぐマイルス・デイビス(Miles Davis)という別の司教(ジャズ・メン)の所に飛び立ち(Takin' Off)、結果、富と名声をどんどん高めていきました。


 もう一人のアンドリューはというと、すぐ、ジャズの伝道師達や、熱心な信者(ジャズ批評家)達の間では一目置かれる存在にはなりました。

 が、しかし、富には見放され、かわいそうなことに最後は、黒い炎(Black Fire)に焼かれジャズの伝道師として殉教を遂げました・・・おしまい。」


 ・・・これは、写真にある3枚のジャケットを眺めていて、ふと浮かんだ物語を書き留めたものです。

 ブルーノートでの初リーダーアルバムのジャケットが、同じ資質を持ちながら結局、正反対な運命をたどる二人を暗示する・・・・何か不思議な偶然です。
 いや、アルフレッド・ライオンは、そこまで見抜いていたのでしょう。


 ためしに「No Room For Squres / Hank Mobley (BST84149)」を聴いて見てください。そこでの二人の演奏は、意識しないと区別出来なくなる程、似通っています。

 だからこそ、アンドリューに富を与えるため(生活を安定させるため)、一般向けにハービーの「Speak Like a Child (BST84279)」のような”売れる”アルバムを作らせていたらどうなっただろう?

 ある寒い春の午後、CDを聴きながらそんな事を空想しておりました・・追悼を込めて。


 ・・・次回からは、私の好きなアンドリュー・ヒルの作品紹介に入ります。

●米ブルーノートのHPです。ニュースページにアンドリューへの追悼文が掲載されています。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト。豊富なライブ音源を無料で視聴できます。
http://www.andrewhilljazz.com/