祝CD化!-Introducing K.Cox and The Contemporary Jazz Quintet Blue Note [BST 84302]2007/10/18 22:21


 このCD(2 in 1)のリリースを見た時、「M・カスクーナさん、ここまで出しますか(笑)・・・・。」と思ったアルバムです。

 先日『CONNOISSEUR SERIES(米ブルーノート)』から、日本ではほぼ発売されないだろう(笑)アルバムが発売されました・・・。

 『完全ブルーノートブック』での、小川隆夫さんのコメントを読んで気になっていたこのアルバム、確か10年位前に中古LP屋さんで見つけて購入しました。
 手持ちの詳細情報は、ジャケット裏の英語解説だけ。英語と格闘してようやくまとめました。



 「新伝承派サウンド」(80年代にウイントン・マルサリスが復活させた、マイルス・クインテットサウンドをお手本とする演奏スタイル)がお好きな方は、十分に楽しめるアルバムだと思います。
 あとテナーのレオン・ヘンダーソン(Leon Henderson)は、あのジョー・ヘンダーソンの弟です。

 ファイト一発!1曲目のドラムパターンを良く聴いていると、「Miles Smiles」の影響が大きいと思われます。
 また、名門レーベルの録音ということで気合が入ったのか、バラエティに富んだ全曲、書下ろしの新曲だそうでです。


 当時のブルーノートで、兼任プロデューサーをつとめていたピアニストのデューク・ピアソン(Duke Pearson)はデトロイトのDJ、ジャック・スプリンガー(Jack Springer)からこのバンドを紹介されたそうです。
 このバンドの演奏を聴いたピアソンは早速、現地デトロイトで録音を行ったそうです。

 おもしろいことにこのアルバム、ルディー・ヴァン・ゲルダー・スタジオで再録音されているんですね。
 手持ちのLPには「VAN GELDER」の刻印が押されており、音はヴァン・ゲルダー・サウンドそのもの。結構良い音をしてます。


 1枚目を聴いた第一印象は、もろ60年代「マイルス・デイヴィス・クインテット」のサウンド!
 特に、ダイナミックなドラムと、印象的なトランペットのフレーズを聴いていると、「皆さん、本当に好きなんだねー」と声を掛けたくなる位の傾倒ぶり。

 ちなみにマイルスのアルバムでテイストが近いものは、1966年10月録音の「Miles Smiles / Miles Davis (Columbia CL 2601)」や、1966年06月録音の「Nefertiti / Miles Davis (Columbia CS 9594) 」あたりでしょう。


 まずA面は、緊張感たっぷり、劇的な展開が魅力の「Mystique」、叙情感溢れる「You」、当時流行りのダンス・ビートにのせた軽快な曲「Trance Dance」、怪しい雰囲気を孕んだアップ・テンポの「Eclipse」と続きます。

 B面に行きますと複雑なテーマが印象的な「Number Four」、テーマ部からもろマイルス風のトランペットが炸裂するバラッドの「Diahnn」でアルバムは終了します。


 アルバムを2ヶ月近く集中して聴いて思うのは、「あと3年早く、このバンドが登場していればなあ・・・。」の一言に尽きます。
 3年前(1965年)にはあの名盤、「処女航海(BN84195)」が録音されています。


 オーネット・コールマンを中心としたフリーの嵐が吹き荒れ、ソウル・ミュージックや、よりポップで踊れるアルバムが求められていただろう時代に、あの「新伝承派風サウンド」では・・・・まあ玄人受けはしても、売れなかったでしょうね。

 時代の流れに乗れなかった「隠れ名盤」を、2007年にCDで手軽に聴けるようになったことを、素直に喜びたいと思います。


●Introducing Kenny Cox and The Contemporary Jazz Quintet
Blue Note/United Artists BST 84302

side one
01. Mystique (K.Cox) 04:40
02. You (D.Durrah) 05:25
03. Trance Dance (K.Cox) 06:00
04. Eclipse (L.Henderson) 05:47

side two
05. Number Four (C.Moore) 10:45
06. Diahnn (L.Henderson) 08:35

Charles Moore(tp) Leon Henderson(ts) Kenny Cox(p) Ron Brooks(b) Danny Spencer(ds)
Recorded on December 9,1968 at United Sound System, Detroit,MI

Produced by Duke Pearson
Re-Recording by Rudy Van Gelder


●メンバー紹介(LP裏の解説より)●

◆ケニー・コックス(Kenny Cox)

 1940年11月08日ミシガン州デトロイト生まれ。
 8才からピアノを習い(トランペットも)、15才から地元でプロ活動を開始。
 途中、ニューヨークに行き、歌手のエッタ・ジョーンズ(Etta Jones)のツアー・バンドに参加。
 1964年にデトロイトに戻り、ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)、ロイ・ヘインス(Roy Haynes)、ローランド・カ-ク(Roland Kirk)らと共演。

 好きなピアニストは、バド・パウエル(Bud powell)、バリー・ハリス(Barry Harris)、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)。
 ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)からも強く影響されているとの事。

◆チャールス・ムーア(Charles Moore)

 録音当時(1968年)28才でアラバマ州出身。
 前は、「Detroit Contemporary Five (D.C.Five)」というアヴァンギャルドのグループを率いていたそうです。
 60年代におけるマイルス・デイヴィスの演奏スタイルから、強い影響を受けているようです。

◆レオン・ヘンダーソン(Leon Henderson)

 1940年12月11日ケンタッキー州リマ生まれで、15人兄弟の末っ子。
 兄であるジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)と同じく、ケンタッキー州立大学の出身。

◆ロン・ブルックス(Ron Brooks)

 録音当時(1968年)33才でイリノイ州エヴァンストン(Evanston)出身で、ミシガン州アン・アーバー(Ann Arbor)在住。
 ミシガン州立大学在学時に、ボブ・ジェームス(Bob James)トリオに在籍していたそうです。

◆ダニー・スペンサー(Danny Spencer)

 1942年04月17日ミシガン州イシュペニング(Ishpeming)出身。
 3年前(1965年)に、ロン・ブルックスと共にヨーロッパに渡り、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)、アート・ファーマー(Art Farmer)、ルネ・トーマス(Rene Thomas)ら刺激的なミュージシャンと共演を重ねる。





コメント

_ 加持顕 ― 2007/10/24 23:33

<補足コメント>
今、読み返して、ふと思ったことを補足。

「全曲、書下ろしの新曲」

にしたのは、60年代マイルス・クインテット風の曲を、それまで演奏していなかったか、あるいは、よりマイルス・クインテット風の演奏にするために、既存曲は捨てたのかな?

このアルバム以前の録音があれば聴いてみたいなあ。

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