「晴天の霹靂」第2幕-Inside Track / Out Of The Blue [Blue Note BST 85128]2007/04/19 06:01

BST85128 Inside Track - O.T.B.

 加持です。春なのに・・・なんだか寒いですね。

 O.T.B.(Out Of The Blue)の2作目です。
 マウント・フジ・ジャズフェスティバル来日時(87年?)、「O.T.B.は、"Off The Bus"の略だ!」とM.モスマンがジョークで言っていたそうです(~~)。

 このアルバムはデビューアルバムから1年後に録音されたもので、1年で急成長を遂げたバンドの素晴らしい演奏が(アンサンブルも)堪能出来ます。

 1作目と比較すると、まずグループとしてのまとまりが素晴らしくなっており、作曲やアンサンブル面も飛躍的に向上しております。

 曲はR.ボーエン(ts)、M.モスマン(tp)、R.ピーターソン(ds)の3人がそれぞれ2曲ずつ持ち寄り、その他、タッド・ダメロン(p, arr)の作品が取り上げられています。


 まずはラルフ・ボーエン(ts)の作品から。

 いかにもオープニング・ナンバーといった風情の「Inside Track」は、テーマ部からR.ピーターソンの切れが良いドラムを堪能出来ます。
 ゆったりとしたリズムに綺麗なアンサンブルがからむラストの「Elevation」は、H.ハンコック(p)の「Speak Like A Child」にも通じるしっとりとした叙情感漂うナンバーです。


 次にマイケル・モスマン(tp)の作品を。

 テーマ部に、”ビックバンドのリフ”の如く”強烈な強弱”付けた「Cherry Pickens」は、ソロの合間にも他の管楽器奏者がバック・リフが入るので、「ビックバンド」か「3管ジャズ・メッセンジャーズ」がお好きな方(私も含む)にお勧めです。
 もう1曲「Isolation」は、M.モスマンのフィーチャー・ナンバーです。彼のふくよかな音色のゆったりとしたソロが楽しめます。


 最後に私の大好きな、ラルフ・ピーターソン(ds)を。

 ミディアム・テンポの「E Force」は、ストップ・タイム(曲の途中で演奏を止める)が効果的に使われていて、ドラム奏者が好きそうなナンバーです。ソロで、ちょっとF.ハバード(tp)しているM.モスマンも素敵です。
 アップテンポの「Nathan Jones」は、ストップ・タイムに加え、後半にラテン風味のリズムが出てくるリズミックなナンバーです。ドラムセットをフルに叩きまくるラルフが圧巻です。
 途中、B.ハースト(b)のソロを挟み、最後にラルフがお得意のフレーズを混ぜつつ、たっぷりとソロを取ります。


 タッド・ダメロンの「Hot House」はピアノ・トリオによる演奏です。

 テーマを飛ばしていきなりソロから入っており、一番最後のテーマで「ああ、ホット・ハウスだったのか」 とオチがつく、と言った感じですかね。
 この曲は、P.J.ジョーンズ(ds)がリーダー勤めたT.ダメロンの作品を演奏するバンド、ダメロニアに参加していたドン・シックラー(tp, arr)あたりの影響でしょう、多分。

 ああ、P.J.ジョーンズで思い出しましたが、ピアニストのエルモ・ホープ(Elmo Hope)が「Hot Souce」という曲を作曲してますね。確か、ブルーノートの5000番台で聴けたような・・・昔、曲名をよく間違えました(~~)。


 近年では、「O.T.B.」のようなバンドを聴くことがないのが寂しい限りです。

 日本の「大坂-原クインテット」も実質的なレギュラー活動を停止してしまっていますし・・・あ、あんまり聴きませんが日本のバンド、「PE'Z」は良いですね。


●Inside Track / Out Of The Blue Manhattan Blue Note BST 85128

01. Inside Track (Ralph Bowen) 5:45
02. Cherry Pickens (Michael Phillip Mossman) 6:21
03. Hot House (Tadd Dameron) 6:37
04. E Force (Ralph Peterson) 5:14
05. Nathan Jones (Ralph Peterson) 7:41
06. Isolation (Michael Phillip Mossman) 7:01
07. Elevation (Ralph Bowen) 6:09

Michael Phillip Mossman (tp) Kenny Garrett (as) Ralph Bowen (ts)
Harry Pickens (p) Bob Hurst (b) Ralph Peterson (ds)
Recorded on June 19 & 20, 1986 at RCA Studio C, NYC


●おまけ
 1985年大晦日のコンサート(公共ラジオ放送(PBS)を通じて全米に放送)で全米デビューした彼らは、1夜にして期待の「新人バンド」として聴衆の注目を集めたようです。正に「晴天の霹靂(Out Of The Blue)」のデビューライブだったのでしょうね。
 CDのライナーを読むと、筆者の小川隆夫さんは「大晦日に行われたライブのリハーサル(12/28-12/30)」を見学していたそうなので、今度機会があればその様子を詳しく聞いてみようと思ってます。


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Inside Track