「Coltrane Live At The Village Vanguard Again! (1966)」の社会的背景2016/10/29 13:46


今回は1966年6月、壮絶なる日本ツアー直前に録音された、 「Coltrane Live At The Village Vanguard Again!」です。


タイトル的には、1961年11月に録音された、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)入りの 「Coltrane "Live" At The Village Vanguard (Impulse! A-10)」再び!という感じですか。



1961年版はドルフィー効果か、あっけらからんとしたアヴァンギャルドな演奏が多いですが、 1966年版は「Live In Japan」同様、絶叫というか振り切れた演奏です。


以下、長くなりますが、「Coltrane Live At The Village Vanguard Again!」 に至るコルトレーンの音楽的変質の謎が、自分なりに納得出来たので、当時の時代背景含め書いていきます。


まずコルトレーンの作品群を眺めていると、1965年2月付近で変質していく事に気がつきます。

「至上の愛(A Love Supreme)」で、神を賛美してたコルトレーンが突然、「Kulu Se Mama」、「Ascension」など、フリーフォームに転進した作品を発表。

Ascension: Editions I & II (Reis) (Rstr)Ascension: Editions I & II (Reis) (Rstr)
John Coltrane

Expression ミンガス・アット・カーネギー・ホール On the Corner Meditations (Reis) (Rstr) (Dig) クル・セ・ママ The 1966 Live Recordings Giant Steps MY FAVOURITE THINGS-COLTR INTERSTELLAR SPACE Transition

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アフリカ回帰、インド思想への傾倒を顕著にした、激情的雄叫びを上げ始めるようになります。

アメリカの歴史に詳しい方ならピンとくるかもしれませんが、そうです、 黒人公民権運動活動家・「マルコムX (Malcolm X)暗殺」を境に、激変していく訳ですね。



ムスリムの「マルコムX」が暗殺された事により、自ら信じるキリスト教への疑問を感じ始めた?
キリスト教を一旦横に置いて、「愛と平和」を求め、他宗教に目を向け始めたとも言えますか。


さて、1966年5月28日のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブを収録した 「Coltrane Live At The Village Vanguard Again!」の収録曲は、 たった2曲(笑)、「Naima」と「My Favorite Things」だけ。

1965年末の録音(Meditations)で、宗教臭い演奏に嫌気が差したピアノのマッコイ・タイナーが退団したため、 1966年初頭からバンドに参加した、アリス・コルトレーンがピアノを弾いております。

ドラムも、前衛派でサン・ラ(Sun Ra)との共演経験があるラシッド・アリ(Rashied Ali)に代わってますね。



1曲目は、お馴染み「Naima」。

ライブでラヴィ・シャンカール(Ravi Shankar)の教え、 「(静寂(シャンティ)」と「安らぎ」が感じられる演奏です。

途中ソロで登場するファラオ・サンダースの咆哮が、全てをぶち壊しますが(笑)。

思索的な静(コルトレーン)と、激情なる動(サンダース)のコントラストが、 最晩年でのコルトレーンバンドの、大きな特徴なのかもしれません。

「Live In Japan」の如く静と動のバランスが崩壊すると、聴くにたえない状態になりますが、 ここでの演奏は、ぎりぎり均等を保ってる感じかと。

レコード時代にはA面最後になりますが「My Favorite Things」の前に、 「Introduction To My Favorite Things」と題されたジミー・ギャリソンのベースソロが、 6分ほど収録されてます。

2曲目は、スピリチュアルな演奏に変貌した「My Favorite Things」。 ベースソロに続いたコルトレーンがテーマを吹き始める前、ソプラノサックスで、 幻想的というか、摩訶不思議なフレーズを紡いでいきます。

悲痛な叫びを上げるサンダースのバックで、コルトレーンが吹く、 フルートの音が聴こえます。

このアルバムでコルトレーンは、バスクラリネットも吹いてるみたいですが、 どの部分がバスクラリネットなのか未だ判断出来てません(泣)。

ただ、いずれの楽器も1961年版に参加してたエリック・ドルフィーの遺品らしいです。


John Coltrane - Coltrane Live At The Village Vanguard Again! (1966) Impulse! A-9124

John Coltrane (ss, ts, bass-cl, fl) Pharoah Sanders (ts, fl)
Alice Coltrane (p) Jimmy Garrison (b) Rashied Ali (ds) Emanuel Rahim (per)

May 28, 1966 at "Village Vanguard", NYC.


01. Naima (John Coltrane) 15:12
02. Introduction To My Favorite Things (Jimmy Garrison) 6:11

03. My Favorite Things (O. Hammerstein II, R. Rodgers) 20:23


LIVE AT THE VILLAGELIVE AT THE VILLAGE
JOHN COLTRANE

Expression MY FAVOURITE THINGS-COLTR Transition Om INTERSTELLAR SPACE Live in Seattle Cosmic Music オレ! John Coltrane Quartet Plays (Reis) (Rstr) クル・セ・ママ

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コルトレーン日本滞在記「Live In Japan(1966)」2016/10/29 23:39


1966年7月。
衝撃的なビートルズ初来日直後、コルトレーン御一行が日本の地に降り立ちます。


過密スケジュール中、長崎平和公園を訪れていることからも推測出来ますが、 新曲「Peace On Earth(地球の平和)」を、広島と長崎に捧げるために、 遠路はるばる日本を訪れたのかもしれません。


「コルトレーン――ジャズの殉教者 (岩波新書) : 藤岡 靖洋」 などを参考にしつつ、来日時の足取りを辿ってみましょう。


コルトレーン――ジャズの殉教者 (岩波新書)コルトレーン――ジャズの殉教者 (岩波新書)
藤岡 靖洋

ジョン・コルトレーン (文藝別冊/KAWADE夢ムック) 超ブルーノート入門―ジャズの究極・1500番台のすすめ (集英社新書) Giant Steps 新書で入門 ジャズの歴史 (新潮新書) マイルス・デイヴィス青の時代 (集英社新書 523F) 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編 (文春文庫) 超ブルーノート入門完結編―4000番台の至福 (集英社新書) ジョン・コルトレーン 私は聖者になりたい (P-Vine BOOks) 一生モノのジャズ名盤500 (小学館101新書) Thelonious Monk Quartet with John Coltrane at Carnegie Hall

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今予定を眺めると、強行スケジュールどころか「狂気の沙汰」でありますな・・・。
ふつーの人間なら、途中で確実にぶっ倒れてますよ・・・これは。


コルトレーン日本滞在:1966年7月08日(金)-7月25日(月)

<8都市15公演、日本のジャズメン達との共演セッション2回>

1966年7月08日(金)、羽田国際空港着~東京プリンスホテル宿泊。
1966年7月09日(土)、記者会見(東京プリンスホテル)、学生達による質疑応答、TBSインタビュー

1966年7月10日(日)、サンケイホール(東京都)
1966年7月11日(月)、サンケイホール(東京都)☆
1966年7月12日(火)、フェスティバルホール(大阪府)
1966年7月13日(水)、広島公会堂(広島県)
1966年7月14日(木)、長崎公会堂(長崎県)
1966年7月15日(金)、長崎平和公園で合掌、福岡市民会館(福岡県)
1966年7月16日(土)、京都会館第二ホール(京都府)、松竹座(大阪府)

1966年7月17日(日)、神戸国際会館ホール(兵庫県)△
1966年7月18日(月)、新宿厚生年金会館(東京都)
1966年7月19日(火)、新宿厚生年金会館(東京都)
1966年7月20日(水)、フェスティバルホール(大阪府)
1966年7月21日(木)、静岡市公会堂(静岡県)
1966年7月22日(金)、新宿厚生年金会館(東京都)☆、東京ビデオホール[交流ジャムセッション]
1966年7月23日(土)、愛知文化講堂(愛知県名古屋市)

1966年7月24日(日)、東京ビデオホール[交流ジャムセッション]
1966年7月25日(月)、羽田国際空港より帰国。

☆「Live In Japan」に収録されたコンサート
△プライベートテープが存在


2日に渡る日本人ジャズミュージシャンとの「交流ジャムセッション」には、ジョージ川口さん、松本英彦さんらが参加。

22日(金)は「バードランドの子守唄(Lullaby Of Birdland)」、「Softly, As In A Morning Sunrise」など4曲。
24日(日)は「Now's The Time」、「There Will Never Be Another You」など3曲を演奏したそうな。

日野皓正さんも会場に居たようですが、セッションに参加してたかは不明。

ディスコグラフィー上では「rejected」と記載された「プライベート録音」が、 現存してたら凄い事になる訳ですが・・・さて。


さて、強行スケジュールで日本全国を駆け回ったうち、東京での公演を収録した「Live In Japan」。

「Afro Blue」、「My Favorite Things」、「Crescent」というお馴染みな曲に加え、 2つ新曲の「Leo」、「Peace On Earth(地球の平和)」の、長尺演奏を聴く事が出来ます。

静(コルトレーン)と動(サンダース)の対比が、より荒々しく感じられますが、 この殺人的な演奏スケジュールでは、仕方ない事かな・・・と。


ジャズ評論家・岩波洋三氏の感想によると、 コルトレーンは演奏のクライマックスで、よだれを垂らしながら演奏していたそうで・・・。

岩波氏は続けて「それは、性行為のクライマックスを思わせる」とも書き記しています。
自己完全燃焼するその姿を評して、「爽やかの無くなった演奏」とも。


ディスコグラフィーを眺めると、東京での正規録音の他、 7月17日(日)「神戸国際会館ホール」の演奏がプライベートテープで存在する模様。

コルトレーン・クロニクル / 写真でたどる生涯コルトレーン・クロニクル / 写真でたどる生涯
藤岡靖洋 菊田有一

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John Coltrane - Live In Japan
Impulse!/GRP 41022

John Coltrane (ss, as, ts, per) Pharoah Sanders (as, ts, bass-cl, per) Alice Coltrane (p)
Jimmy Garrison (b) Rashied Ali (ds) Hisato Aikura (announce)

Disc 1 & 2: July 11, 1966 at "Sankei Hall", Tokyo, Japan.
Disc 3 & 4: July 22, 1966 at "Shinjuku Koseinenkin Kaikan", Tokyo, Japan.


<July 11, 1966 at "Sankei Hall", Tokyo, Japan. >

Live In Japan [Disc 1] July 11, 1966

 01. Afro Blue (Mongo Santamaria) 38:48
 02. Peace On Earth (John Coltrane) 26:24

Live In Japan [Disc 2] July 11, 1966

 01. Crescent (John Coltrane) 54:34


<July 22, 1966 at "Shinjuku Koseinenkin Kaikan", Tokyo, Japan. >

Live In Japan [Disc 3] July 22, 1966

 01. Peace On Earth (John Coltrane) 25:06
 02. Leo (John Coltrane) 44:50

Live In Japan [Disc 4] July 22, 1966

 01. My Favorite Things (Richard Rodgers & Oscar Hammerstein II) 57:19


Live in Japan
Live in JapanJohn Coltrane

Grp Records 1991-05-21
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INTERSTELLAR SPACE Ascension: Editions I & II (Reis) (Rstr) コルトレーン――ジャズの殉教者 (岩波新書) エレクトリック・マイルス1972‐1975 ~「ジャズの帝王」が奏でた栄光と終焉の真相~ (ワニブックスPLUS新書)


あ、有名な「私は聖者になりたい(笑)」発言について、書くの忘れてた(笑)。

新妻アリスに対し、過去の不逞を「公式謝罪」する意味合い含む発言だったそうです。

パワフルな演奏から推測出来るように、何人かの女性と深い関係があった模様。