新・ブルーノートRVGコレクション第7回より-ウナ・マス+1 - ケニー・ドーハム2008/01/04 22:23

UNA MAS - KENNY DORHAM  Blue Note BST-84127

 ドラマーが火に油を注ぐような演奏を繰り広げた場合、それに最も呼応(反応)するのがトランペッターでしょう。
 今回のリーダー、ケニー・ドーハムも新人アンソニー(トニー)・ウィリアムスに斬新なリズムに煽られ、ジャズ・メッセンジャーズ(勿論ドラマーはアート・ブレイキー!)以来の物凄いブローを披露しています。

 そして、ピアノはハービー・ハンコック、テナーはジョー・ヘンダーソンとこれまた、演奏を熱く燃え上がらせるメンツばかり・・・。
 なんだかメンバーのことを、1963年度版『Kenny Dorham & The New Jazz Messengers』とでも呼びたいですね。


 アフロ・キューバン・ジャズとボサ・ノバが混合されたような熱狂的なナンバー「UNA MAS (ONE MORE TIME)」。
 C・ベイシー楽団の名曲「April In Paris」同様、途中「UNA MAS !」の掛け声とともに、もう一度テーマが繰り返されます。

 『THE JAZZ MESSENGERS AT THE CAFE BOHEMIA Vol.1 Blue Note BLP-1507』収録の「MINOR'S HOLIDAY」以来ですね、これだけ気持ち良くブローするケニー・ドーハムを聴いたのは。それ位凄い。
 あとバックでソロのようにピアノをガンガン弾きまくるハービーと、トニーの斬新なドラム!


 トニーの奔放なドラムが冴えるハードな「STRAIGHT AHEAD」ではケニーは勿論、ジョー・ヘンダーソンのパルス波を放射するかのような摩訶不思議なソロが面白いですね。

 哀愁漂うボサ・ノバ・チューン「SAO PAULO」は、ストップ・タイム(演奏を途中で止める)やソロを受け渡す時にリフを加えるなど工夫を凝らした作品です。


 なお今回は、スタンダード(?)の「IF EVER I WOULD LEAVE YOU」が追加されております。

TOCJ-7067 ウナ・マス+1 / ケニー・ドーハム

●UNA MAS / KENNY DORHAM Blue Note BST-84127

01. UNA MAS (ONE MORE TIME) (Kenny Dorham) 15:17

02. STRAIGHT AHEAD (Kenny Dorham) 8:56
03. SAO PAULO (Kenny Dorham) 7:18

04. IF EVER I WOULD LEAVE YOU

Kenny Dorham (tp) Joe Henderson (ts) Herbie Hancock (p) Butch Warren (b) Anthony(Tony) Williams (ds)
Recorded on April 1, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

ウナ・マス+1ウナ・マス+1
ケニー・ドーハム ジョー・ヘンダーソン ハービー・ハンコック

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<付記>

「Una Mas」という曲は元々、「US」というタイトルで録音されております。

 シャッフルとワルツが混ざったような不思議なビートで演奏される「US」は、1961年11月にカリフォルニアの「ジャズ・ワークショップ(Jazz Workshop)」でライブ録音された、『Inta Somethin' / Kenny Dorham & Jackie McLean (Pacific Jazz PJ-41)』の1曲目に収録。
 バックはピアノがウォルター・ビショップJr.、ベースがリロイ・ビネガー、そしてドラムがアート・テイラーです。




新・ブルーノートRVGコレクション第7回より-春の如く - アイク・ケベック2008/01/03 00:28

IT MIGHT AS WELL BE SPRING - IKE QUEBEC  Blue Note BST-84105

 ・・・はい今回はブルー・ノートで運転手!とA&R(アーティストと楽曲の管理)も担当していた、アイク・ケベック(Ike Quebec)の「春の如く(It Might as Well Be Spring)」です。
 また今回、リマスターを担当したルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)も、顔なじみのアーティストの作品なので、ある程度気合を入れてリマスターしたのではないでしょうか?

 緑色のジャケットが素敵な一枚。出来ればジャケットを見ながらで聴いて欲しい作品・・・『2007年04月06日』に書いた記事をリミックスして、お送りします。


 つい最近発売された『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100/小川隆夫(河出書房新社)』で紹介される1枚目が、この作品なんですね・・・・これホント感慨深いです。

 「内容はとてもいいんだがね」「才能に溢れたプレイヤーなんだけどもね」とスタンリー・タレンタイン(1986年)が言えば、「とってもいいやつだったんだが」「歌心がある」とジャッキー・マクリーン(1998年)が褒めちぎる、という具合。
 一流ミュージシャン2人のコメントからも、このアルバムの良さが分かってもらえるでしょう・・・・。


 タイトル曲「春の如く(IT MIGHT AS WELL BE SPRING)」は、R.ローチの朝霞漂ようなオルガンのイントロに導かれ、程好いソウル&ブルース・フィーリング醸し出すテナーが聴こえて来るというリラックス度満点の1曲。私は、この曲だけでも満足出来ます・・・・はい。

 バラッドの「Lover Man」でしみじみし、アップテンポの「Ol' Man River」では、ケベックの軽快なブローが楽しめます。
 ただコテコテのホンカー!風ブロー気味の「Ol' Man River」は、アルバム内で浮いて聴こえるのが難点・・・(~~)。

 そして「A LIGHT REPRIEVE」、「EASY-DON'T HURT」というテンポは違えど、どちらもソウルフルなアイク・ケベックのオリジナル2曲も収録。


 ソフィスティケイトされた「ソウル&ブルース」好みの方は、是非ともお聴きくださいませ。そして、バックで控えめな演奏に終始するオルガンもまた良し!
 ・・・ゴリゴリの「ハード・バップ」や「コテコテ・サウンド」が好みの方は、箸休めの1枚として(笑)どうぞ。


TOCJ-7066 春の如く / アイク・ケベック

●IT MIGHT AS WELL BE SPRING / IKE QUEBEC Blue Note BST-84105

01. IT MIGHT AS WELL BE SPRING (R.Rodgers-O.Hammerstein) 6:15
02. A LIGHT REPRIEVE (Ike Quebec) 5:21
03. EASY-DON'T HURT (Ike Quebec) 6:04

04. LOVER MAN (Ramirez-Davis-Sherman) 5:34
05. OL'MAN RIVER (J.Kern-O.Hammerstein) 6:34
06. WILLOW WEEP FOR ME (Ann Ronnell) 5:18

Ike Quebec (ts) Freddie Roach (org) Milt Hinton (b) Al Herewood (ds)
Recorded on December 9, 1961 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.





新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-ナイト・ドリーマー+1-ウェイン・ショーター2007/12/09 10:42

NIGHT DREAMER - WAYNE SHORTER  Blue Note BST-84173

 ブルーノート初リーダー作は、あのW・ショーターらしからぬ(笑)爽やかなアルバムです。
 なんでしょうねこの爽快感は。ああ、『Page One / Joe Henderson(BST-84140)』と同じ感じ。
 両作共に参加する、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)のせい(笑)か?


 そしてリー・モーガンとは、『A.ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ』で共演していた仲。
 『決定版ブルーノート・ブック(ジャズ批評ブックス)』をぱらぱらめくるとウェインはこの頃、頻繁にモーガンとスタジオ入りしてみたいです。

 まず2ヶ月前の2月15日には『Search For The New Land / Lee Morgan(BST-84169)』を録音。
 このアルバムの前後、4月24日と5月15日には『Indestructible / Art Blakey & The Jazz Messengers(BST-84193)』で共演しております。

 おっと忘れちゃいけない、リズム・セクションはあのジョン・コルトレーン・カルテットの3人です。
 全体的にアトランテック時代の「J・コルトレーン・カルテット」の雰囲気がするのはそのせいか?


 1曲目はワルツの「NIGHT DREAMER」。何回聴いても爽やかだなあこの演奏。
 あとJ・コルトレーン・カルテットの「My Favorite Things」を思い出してしまいます。

 「ORIENTAL FOLK SONG」は、古い中国の唄からインスパイアされたそうです。
 エルビンのタメを効かせたリズムに乗り、フロントの二人もタメを効かせたロングトーン多めのフレーズを連発します。
 セカンド・リフに続いてエルビンのドラム・ソロがあります。

 お次は自身の誕生日(1933年8月25日生)の星座から命名されたバラッドの「乙女座(VIRGO)」です。
 この曲だけウェインのワンホーンで演奏され、モーガンお休み。
 雰囲気は、4ヶ月後に録音される2枚目のリーダー作『JUJU(BST-4182)』に繋がってますね。マッコイの短いソロも秀逸。


 「BLACK NILE」のタイトルは、アラン・ムーアヘッド(Alan Moorehead)の小説?『The White Nile and The Blue Nile』からインスパイアされたそうです。
 ハードにスイングするこの曲、モード路線のジャズ・メッセンジャーズ・サウンドに近いです。
 と言う訳で、ソロではモーガンが大健闘。前述の『Indestructible / Art Blakey & The Jazz Messengers(BST-84193)』で聴かせる、熱いフレーズを連発します。

 マッコイの短いソロで始まるファンキーな「CHARCOAL BLUES」も、ほぼジャズ・メッセンジャーズ・サウンド。
 ちなみに「CHARCOAL」とは木炭のことらしいです。


 物騒なタイトルがついた「アルマゲドン(ARMAGEDDON)」、シリアスで結構劇的なテーマを持つ曲です。

 ハードなソロを展開するショーター、洒脱なモーガン、高速で鍵盤の上を跳ね回るマッコイとラストの曲としては文句無し。
 バックのエルビンとレジー・ワークマンの強烈なドライブ感も凄いなあ。


●TOCJ-7058 ナイト・ドリーマー+1 / ウェイン・ショーター




●NIGHT DREAMER / WAYNE SHORTER Blue Note BST-84173

01. NIGHT DREAMER (Wayne Shorter) 7:26
  02. ORIENTAL FOLK SONG (Wayne Shorter) 6:48
03. VIRGO (Wayne Shorter) * 7:05

04. BLACK NILE (Wayne Shorter) 6:25
05. CHARCOAL BLUES (Wayne Shorter) 6:51
06. ARMAGEDDON (Wayne Shorter) 6:19

07. VIRGO (Wayne Shorter) * -alternate take- 7:03

Lee Morgan (tp -omit *) Wayne Shorter (ts) McCoy Tyner (p) Reggie Workman (b) Elvin Jones (ds)
Recorded on April 29, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-アウト・トゥ・ランチ / エリック・ドルフィー2007/10/06 12:40


 第4回発売分はこれで最後です。

 鬼才エリック・ドルフィーのブルーノート唯一のリーダー作。
 この異世界から聴こえてくるような摩訶不思議なサウンドは、強烈な磁力を持ち、我々を誘惑してきます。

 この魂を奪われる程の「危険なサウンド」の創造主は、ジャケットに写る「Will Be Back」という文字を残し未だに戻って来ません。
 彼がヨーロッパ演奏旅行中、病気の治療のために投与されたインシュリンにより、ショック死しなければ・・・・。

 次回作録音の準備までしていたアルフレッド・ライオンも、彼の訃報を聞いて、しばらく仕事が出来なくなるほどのショックを受けたそうです。


 この摩訶不思議なアルバム、曲解説する程の語彙を持ち合わせていないので、各曲についてのメモだけ記載しておきます。
 無理やり詩的な表現で誤魔化すのも、なんだしなあ。原盤解説を読んで、さらに頭が混乱してきたし・・・。


 ●「T・モンクの事を考えながら作ったんだ」という、「HAT AND BEARD」

 ●メンバーにリリカルな感じで演奏して欲しいと依頼した「SOMETHING SWEET,SOMETHING TENDER」

 ●ドルフィーが師事したフルートの巨匠の名前を付けた「GAZZELLONI」

 ●マーチ風のリズムから始まる「OUT TO LUNCH」。軽やかなリズムに乗せて我々を何処に導こうとしているのでしょう。

 ●酔っ払いの千鳥足をイメージして作曲したという「STRAIGHT UP AND DOWN」


 あと、フレディー・ハバード(tp)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、トニー・ウィリアムス(ds)、リチャード・デイビス(ds)、の四人もリーダーの指示通り、「全員対等な立場」で演奏を盛り立てます。


●TOCJ-7040 アウト・トゥ・ランチ / エリック・ドルフィー




●OUT TO LUNCH / ERIC DOLPHY Blue Note BST4163

01. HAT AND BEARD (Eric Dolphy) 8:22
02. SOMETHING SWEET,SOMETHING TENDER (Eric Dolphy) 6:00
03. GAZZELLONI (Eric Dolphy) 7:18

04. OUT TO LUNCH (Eric Dolphy) 12:05
05. STRAIGHT UP AND DOWN (Eric Dolphy) 8:19

Freddie Hubbard (tp) Eric Dolphy (as, bcl, fl)
Bobby Hutcherson (vib) Richard Davis (b) Tony Williams (ds)

Recorded on February 25, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

新・ブルーノートRVGコレクション第4回より-テイキン・オフ+3 / ハービー・ハンコック2007/10/05 22:56


 ブルー・ノートの影の立役者、ドナルド・バードによって発見されたハービー・ハンコックの初リーダー・アルバムです。
 フロントには、勢いに乗るF・ハバードと、D・ゴードンという豪華さ。
 ビ・バップ時代の巨人、ゴードンがファンキーな曲を違和感無く演奏しているというのも、良く考えると不思議な気がします。

 まあモンゴ・サンアマリア楽団の演奏で大ヒットした、ファンキーな「WATERMELON MAN」がずば抜けて人気ですかね。
 のりの良いテーマを聴いているとつい、「Hey ! Watermelon Man !」と叫んでしまいそうになります。


 2曲目、3拍子の「THREE BAGS FULL」の雰囲気を、原盤ライナーを執筆したレナード・フェザーさんは、コルトレーンが参加した50年代「M・デイビス・クインテット」の様だと書いております。
 そういわれるとあら不思議、D・ゴードンのテナー・ソロがコルトレーンの演奏のように聴こえてきます。

 3曲目、ミドルテンポのブルース「EMPTY POCKETS」は、最後のテーマに戻る直前にセカンド・リフを挿入するなど、工夫が見られます。

 マイナー調の「THE MAZE」は、後の傑作アルバム「Empyrean Isles(Blue Note 84175)」にも通じるクールな曲です。
 ソロを盛り上げるバッキング、圧倒的なハービーのテンションの高さは凄い!の一言。

 続く緩め(笑)のファンキーナンバー「DORIFTIN'」は、箸休め的演奏なんでしょうか?ゆったりしたテンポに乗って、各人がとてもリラックスした演奏を聴かせてくれます。

 アルバムを締めくくる「ALONE AND I」は、耽美と表現するのに相応しいバラッドです。
 この曲調の路線は、これまた名盤の誉れ高い「Speak Like A Child(Blue Note 84279)」で集大成されます。


 22歳の初リーダー作で、これだけさまざまなタイプの曲を聴かせてくれるハービー・ハンコック、ホント天才ですね。


●TOCJ-7039 テイキン・オフ+3 / ハービー・ハンコック




TAKIN' OFF / HERBIE HANCOCK Blue Note BST84109

01. WATERMELON MAN (Herbie Hancock) 7:10
02. THREE BAGS FULL (Herbie Hancock) 5:26
03. EMPTY POCKETS (Herbie Hancock) 6:08

04. THE MAZE (Herbie Hancock) 6:45
05. DORIFTIN' (Herbie Hancock) 6:57
06. ALONE AND I (Herbie Hancock) 6:27

07. WATERMELON MAN -alternate take
08. THREE BAGS FULL -alternate take
09. EMPTY POCKETS -alternate take

Freddie Hubbard (tp, flh) Dexter Gordon (ts) Herbie Hancock (p) Butch Warren (b) Billy Higgins (ds)

Recorded on May 28, 1962 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.


新・ブルーノートRVGコレクション第3回より-ゴー!/デクスター・ゴードン2007/09/08 00:02


●TOCJ-7029 ゴー!/デクスター・ゴードン



今日はD.ゴードンの「GO!」、説明無用かな・・・・。
このアルバム、D.ゴードン自身が演奏し続けた1曲目の「Cheese Cake」が一番有名ですね。


あと大好きな、「Love For Sale」が入っているので、昔はC.アダレイ(as)やS.タレンタイン(ts)のライブ盤と聴き比べをしておりました。

サイドメンの演奏では、やはりソニー・クラーク(p)が良いですね。あ、ドラムスはB.ヒギンズか。ほんと名盤でし。

●Go ! / Dexter Gordon Blue Note 84112

01. Cheese Cake (Dexter Gordon) 6:30
02. I Guess I'll Hang My Tears Out to Dry (Styne/Cahn) 5:20
03. Second Balcony Jump (Eckstine/Valentine) 7:04

04. Love For Sale (Cole Porter) 7:35
05. Where Are You ? (Adamson/McHugh) 5:18
06. Three O'Clock in the Morning (Robledo/Terriss) 5:41

Dexter Gordon (ts) Sonny Clark (p) Butch Warren (b) Billy Higgins (ds)
Recorded on August 27, 1962 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

暴走しまくる快演奏!-Empyrean Isles + 2 - Herbie Hancock [Blue Note BLP 84175]2007/06/28 04:42

Empyrean Isles - Herbie Hancock  Blue Note BLP 84175

 加持です。まだまだあっちぇー(暑い)日が続きますね・・・って、もう真夏かよ!


 今日は前回の続き、「新・ブルーノート RVG コレクション」でも発売された「エンピリアン・アイルズ+2/ハービー・ハンコック」について少し触れておきましょうか。


 ・・・このアルバム、リーダーのハービーではなく、外のメンバーに耳が向くんですよね。
 特に、コルネットで参加する(珍しい!)フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)と、いつにも増してドラムが唄っているトニー・ウィリアムス(Tony Williams)に・・・。

 ホント、フレディ・ハバードがリーダーの「ハービー・ハンコック作品集」だと勘違いする程、1曲目の「One Finger Snap」から勢いのある演奏を聴かせてくれますねー、フレディ。

 いいなー、この若さに任せた、ブレーキの利かない暴走列車みたいな演奏・・・他のメンバー、止めるどころか煽りまくってるし。


 しかしこの見事なフィット感、ハービーはフロントのフレディ・ハバードを念頭にいれて、曲(と編曲)を用意したのでしょう・・・まあ、トランペッターと相性の良いハービーだからこそ創り得た、(トランペット・)ワンホーン・カルテットによる名演です。


●Empyrean Isles + 2 / Herbie Hancock Blue Note BLP 84175

01. One Finger Snap (Herbie Hancock) 07:17
02. Oliloqui Valley (Herbie Hancock) 08:27

03. Cantaloupe Island (Herbie Hancock) 05:30
04. The Egg (Herbie Hancock) 13:57

05. One Finger Snap (Herbie Hancock) -alternate take- 07:33
06. Oliloqui Valley (Herbie Hancock) -alternate take- 10:45

Freddie Hubbard (cor) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)
Recorded on June 17, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, NJ.

●おまけ
 約1年後に録音される大名盤「処女航海 Maiden Voyage(Blue Note 84195)」は、このカルテットにテナーのジョージ・コールマン(George Cloeman)を追加したものですね。

 あと追加された2曲の別テイクですが、完成度の高い本テイクと比べると・・・・ですので、あくまでも「おまけ」だと割り切って聴きましょう。
 って言うか、アルバムの完成度が1ランク落ちる気がするので、このアルバムに限り、思い切って削ったほうがいいかも・・・。





父と母に捧げられた大ヒット・アルバム-Song For My Father - Horace Silver Blue Note BLP 41852007/05/13 20:20

BST4185 Song For My Father - Horace Silver

 加持です。みなさん母の日のプレゼントは何にしましたか?

 今日は「母の日」なのに、「Song For My Father」です。あえて今日、取り上げます(~~)。


 ホレス・シルバー(Horace Silver)の大ヒット・ナンバーが収録されたこのアルバム、実はホレス一家の思い出を綴った作品集です。
 ジャケットに写る彼の父、ジョン・タバレス・シルバーさんはアルバム録音直前に亡くなってしまったそうで、アルバムの最後にトリオで演奏される「Lonely Woman」は、未亡人となった彼の母に捧げた曲のようです。

 「The Natives Are Restless Tonight」などは子供の頃、隣の一家がパーティ好きで、よく夜明けまで騒いでいた事を思い出しながら作った作品なんだとか。


 「父」に捧げる曲で始まり、「母」に捧げる曲で終える。大ヒットした理由の一つは、家族愛、ホレスの家族への「思い出がいっぱい」つまっているから、かもしれませんね。


 その他、新加入したフロント陣の熱演も見逃せません。

 曲も提供しているジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)はもちろん、珍しいカーメル・ジョーンズ(Carmell Jones)の好プレイが聴けるのも嬉しいです。
 このアルバム以上のカーメル・ジョーンズの好プレイ、他では聴いたことがないのが残念なんですが・・・しかし、寡作なプレイヤーの最高な演奏を引き出すアルフレッド・ライオンは、偉大です。


 最後にCD化で加えられた4曲では、ホレスのピアノプレイに焦点が当てられ、フロント陣はバッキングに終始しております。


●Song For My Father + 4 / Horace Silver Blue Note BLP 4185(CDP 7 84185-2)

Side 1
01. Song For My Father (Horace Silver) *2
02. The Natives Are Restless Tonight (Horace Silver) *2
03. Calcutta Cutie (Horace Silver) *1
Side 2
04. Que Pasa ? (Horace Silver) *2
05. The Kicker (Joe Henderson) *2
06. Lonely Woman (Horace Silver) *1

CD Bouns Tracks
07. Sanctimonious Sam (Horace Silver) *1
08. Que Pasa ? - Trio Version - (Horace Silver) *1
09. Sighin' And Cryin' (Horace Silver) *3
10. Sliver Treads Among The Soul (Horace Silver) *3

*1
Blue Mitchell (tp) Junior Cook (ts) Horace Silver (p) Gene Taylor (b) Roy Brooks (ds)
Recorded on October 31, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, NJ

*2
Carmell Jones (tp) Joe Henderson (ts) Horace Silver (p) Teddy Smith (b) Roger Humphries (ds)
Recorded on October 26, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, NJ

*3
Blue Mitchell (tp) Junior Cook (ts) Horace Silver (p) Gene Taylor (b) Roy Brooks (ds)
Recorded on January 28, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, NJ





映像が浮かぶアルバム - Out To Lunch - Eric Dolphy Blue Note BST 841632007/05/12 02:00

BN4163 Out To Lunch  Eric Dolphy

加持です。
今回は、前回のCDリスト転記の時、目に留まった、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)「Out To Lunch」です。


抽象絵画的な作品と言えば良いのでしょうか?・・・一聴後、音を辿るだけでは到底解説不能と判断、全曲タイトルの意訳を開始しましたよ。
・・・このアルバム、LP(最初はレコードだ!)のAB面で異なるコンセプトなのですね。いやー調べてみるもんだ。
曲順に書いてみると、こんな風(意味)になります。


★A面(人物描写 編)

01. 帽子を被り、髭を生やした(男) ←(補足1)ずばり、セロニアス・モンクのことです(ライナーノートより)。曲調もモンク風。
02. 時には甘く、時には優しく ←(補足2)多分、ドルフィー本人の事だと思いますが、いかがでしょう?
03. セヴェリーノ・ガッツェローニ(Severino Gazzelloni)に捧ぐ ←(補足3)ドルフィーのフルートの先生(イタリア出身)です(ライナーノートより)。


★B面(ある日の出来事 編)

04. 昼食のため外出中! ←(補足4)マーチのリズムに乗り、足どり軽やかに何処へ・・・?
05. 酔っ払いの足どり ←(補足5)昼食でお酒、千鳥足でご帰還。


しかしこのアルバムも、ドイツの合理主義的・機能主義的な「バウハウス芸術」の流れにも影響されたと思われる(長いな)、アルフレッド・ライオンの好みをモロに反映しているのでしょうね。

ジャズの範疇で収まり切れていない、実にシュールな演奏内容については・・・この拙い意訳から推測してみて下さい。

「Out To Lunch」は、単なるジャズファンより、芸術全般(特に映画や演劇)に興味のある人の方が、理解しやすい気がします、多分。


●Out To Lunch / Eric Dolphy Blue Note BST 84163

01. Hat And Beard (Eric Dolphy)
02. Something Sweet, Something Tender (Eric Dolphy)
03. Gazzelloni (Eric Dolphy)

04. Out To Lunch (Eric Dolphy)
05. Straight Up And Down (Eric Dolphy)

Freddie Hubbard (tp) Eric Dolphy (as, bcl, fl) Bobby Hutcherson (vib) Richard Davis (b) Tony Williams (ds)
Recorded on February 25, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, NJ



●amazon で購入出来るCDです。





「Point Of Departure (BST84167)」 -A.ヒル追悼(3)2007/04/27 15:42

Point Of Departure - Andrew Hill  (BST4167)

 加持です。最初に、A.ヒル関連の情報サイトを再掲します。

●米ブルーノートのHPです。ニュースページにアンドリューへの追悼文が掲載されています。
http://www.bluenote.com/
●アンドリュー・ヒル自身のオフィシャルサイト。豊富なライブ音源を無料で視聴できます。
http://www.andrewhilljazz.com/


 2枚目は、E.ドルフィー(Eric Dolphy)を含むオールスターで録音された「Point Of Departure(BST8467)」です。
 意外とあっさりとした感じな仕上がり感は、T.ウィリアムス(Tony Williams)の若さ一杯!溌剌としたドラムのおかげでしょう。

 しかし良く考えると、ドラムで印象がガラっと換わるのがA.ヒル(p)の作品群なんですよね。

 例えば、「Judgment !(BST4159)」 でのE.ジョーンズ(ds)は、J.コルトレーン(ts)バンドでの演奏同様、音の隙間(空間)を埋めようとするので、「重苦しさ」に加え「暑苦しさ」が増して気楽に聴きにくいこと・・・。

 つまり、A.ヒルと演奏する場合、音の隙間を埋めず、意図的に生み出す演奏をしないと、駄目な(聴きにくい)様です。


 あと、フリー寄りの演奏が得意なE.ドルフィー(as, bcl, fl)の参加により、1枚目より過激さが増しています。

 中でも1曲目、トニーの叩き出す変幻自在のリズムが独特の雰囲気を醸し出す「Refuge」が、A.ヒルが前に出ておもしろい演奏だと思います。

 5曲目の「Dedication」は耽美寄りの演奏なのですが、E.ドルフィーのバス・クラリネットによる咆哮一発で、過激な方向に・・・(~~)。


 しかしこのアルバム、E.ドルフィー(as, bcl, fl)のバス・クラによる咆哮と、T.ウィリアムス(ds)の過激な演奏だけ耳に残りますね(~~)。

 まあ、ブルーノート新主流派オールスターズによる「アンドリュー・ヒル作品集」というのが、正しいアルバム解釈になりますか・・・・。


●Point Of Departure / Andrew Hill Blue Note BST84167

01. Refuge (Andrew Hill)
02. New Monastery (Andrew Hill)
03. Spectrum (Andrew Hill)
04. Flight 19 (Andrew Hill)
05. Dedication (Andrew Hill)

CD additional tracks
06. New Monastery (Alternate Take)
07. Flight 19 (Alternate Take)
08. Dedication (Alternate Take)

Kenny Dorham (tp) Eric Dolphy (as, bcl, fl) Joe Henderson (ts) Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Tony Williams (ds)
Recoreded on March 21, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, NJ


●「Point Of Departure」紙ジャケット日本盤(RVG Edition)
ポイント・オブ・ディパーチャー+3(完全限定生産/紙ジャケット仕様)
●「Point Of Departure」日本盤(1994年-東芝EMI)
ポイント・オブ・ディパーチャー