新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-タイム・ウェイツ ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.4+12007/12/01 22:12


 このアルバム、パウエルのブルーノート作品中で一番聴いてない(笑)作品です。聴かない理由は、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)の派手過ぎるドラム。
 あのパワフルなドラムが五月蝿すぎ、パウエルの雰囲気で聴かせるピアノに集中出来ないからなあ。

 パウエル自身もそう感じていたらしく、次作の大人気盤「The Scene Changes / The Amazing Bud Powell Vol.5」の録音ではドラマーのアート・テイラー(Art Taylor)に、「シンバル禁止!」、「ブラシだけで演奏しろ!」と言ったとか言わないとか・・・・。


 パワフルなドラムが炸裂するラテン調の「BUSTER RIDES AGAIN」、頭からパウエルが唸りまくる、軽快な「SUB CITY」までは一気に進みます。
 タイトル曲でもある「TIME WAITS」では、心に染み入るようなバラッドを堪能出来ます。
 ややテンポの速いビバップ調の「MARMALADE」では、サム・ジョーンズの長めのベースソロが披露されます。


 ミディアム・テンポの「MONOPOLY」は、ラフなテーマからパウエルの変化に富んだ演奏を聴くことが出来ます。
 アップテンポの「JOHN'S ABBEY」は、もろビバップ・ナンバー。ハイハットとブラシだけで演奏を盛り上げるフィリーのドラムが凄いですね。
 「DRY SOUL」はオーバーな位、ためを効かせたブルース。オリジナル盤の最後は、「SUB CITY」の別テイクで締めくくります。


 なお今回のCDでは、「JOHN'S ABBEY」の別テイクが追加されております。



●TOCJ-7054 タイム・ウェイツ ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.4+1 / バド・パウエル




●TIME WAITS THE AMAZING BUD POWELl VOL.4 / BUD POWELL Blue Note BLP 1598

01. BUSTER RIDES AGAIN (Bud Powell) 5:34
02. SUB CITY (Bud Powell) 4:32
03. TIME WAITS (Bud Powell) 5:06
04. MARMALADE (Bud Powell) 4:28

05. MONOPOLY (Bud Powell) 4:47
06. JOHN'S ABBEY (Bud Powell) 5:40
07. DRY SOUL (Bud Powell) 6:41
08. SUB CITY (Bud Powell) -alternate take- 2:37

09. JOHN'S ABBEY (Bud Powell) -alternate take-

Bud Powell (p) Sam Jones (b) Philly Joe Jones (ds)
Recorded on May 24, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.


新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-オフ・トゥ・ザ・レイシス-ドナルド・バード2007/12/02 20:31

OFF TO THE RACES  DONALD BYRD  Blue Note BST-84007

 ドナルド・バード(Donald Byrd)のようやく実現したブルーノート初リーダー作品。
 当時、コンビを組んでいたペッパー・アダムス(Pepper Adams)に、ジョージ・ウォーリントン・クインテット時代の同僚であるジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)を加えた3管編成のバンドです。

 急速調の「LOVER COME BACK TO ME」から、バードの美しいトランペットの音色が堪能出来るバラッド「WHEN YOUR LOVER HAS GONE」、ファンキーな「SUDWEST FUNK」など、ヴァラエティに富んだ作品です。



●「OFF TO THE RACES」の謎

「OFF TO THE RACES」という曲、実はほぼ似通ったメロデイを持つ2曲を聴いたことがあります。

1つは、1958年4月にファイブ・スポット(Five Spot Cafe)で録音された 『10 To 4 At The 5 Spot / Pepper Adams (Riverside RLP 12-265)』収録の「The Long Two/Four (Donald Byrd)」、

もう1つは、1968年4月に、録音された 『Puttin' It Together / Elvin Jones (Blue Note BST-84282)』収録の「Keiko's Birthday March (Elvin Jones)」

バードの場合は、曲の楽曲登録のために曲名を変更したのだとすんなり合点が行くが、10年後に録音されたエルビンは判らない(笑)!
1958年のファイブ・スポットでのライブに、バードとエルビンの両方が参加していることかが何か関係しているのでしょうか??

どなたかご存知の方がいれば、是非ともご教授願いたいものです。


●TOCJ-7055 オフ・トゥ・ザ・レイシス / ドナルド・バード




●OFF TO THE RACES / DONALD BYRD Blue Note BST-84007

01. LOVER COME BACK TO ME (HammersteinⅡ-Romberg) 6:50
02. WHEN YOUR LOVER HAS GONE (E.A.Swan) * 5:02
03. SUDWEST FUNK (Donald Byrd) 6:52

04. PAUL'S PAL (Sonny Rollins) 7:07
05. OFF TO THE RACES (Donald Byrd) 6:35
06. DOWN TEMPO (Donald Byrd) 5:21

Donald Byrd (tp) Jackie McLean (as -omit *) Pepper Adams (bs -omit *) Wynton Kelly (p) Sam Jones (b) Art Taylor (ds)
Recorded on December 21, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.



<付記>

●10 To 4 At The 5 Spot / Pepper Adams (Riverside RLP 12-265)

Donald Byrd (tp) Pepper Adams (bs) Bobby Timmons (p) Doug Watkins (b) Elvin Jones (ds)
Recorded on April 15, 1958 at "Five Spot Cafe", NYC.

●Puttin' It Together / Elvin Jones (Blue Note BST-84282)

Joe Farrell (ts, ss, fl, picc) Jimmy Garrison (b) Elvin Jones (ds)
Recorded on April 8, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.


「マイルスを聴こう」 マイルス・デイヴィス アンド・ミルト・ジャクソン2007/12/04 22:38

Miles Davis And Milt Jackson Quintet-Sextet  Prestige PRLP 7034

 9月と10月に『ユニバーサル JAZZ THE BEST Legendary 150』として、リバーサイド、プレステッジなどの名門レーベルの名盤150枚が一挙に発売されました。
 今日はその中からマイルスの隠れた名演奏を。実は本アルバム、真実の「喧嘩セッション(笑)」でもあります。


 中山康樹さんが翻訳された「マイルス・デイビス自叙伝(1)」を読むと、1955年はマイルスにとって激動の年であったことが分かります。

 まず3月に、マイルスは前妻の扶養義務不履行の為ぶち込まれた刑務所で、師匠であるバードことチャーリー・パーカー(Charlie Parker)の死亡を知らされます。
 麻薬中毒だったバードの死は、ジャズ界に衝撃を与えたようです。おかげで、麻薬をやめようとするジャズ・ミュージシャンが増えたとか。

 そして7月には、第2回のニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演し、作曲者のセロニアス・モンクを含むオールスター・バンドで「ラウンド・ミッドナイト」を演奏。
 その演奏を聴いたプロデューサーのジョージ・アバキャンにより、コロンビア・レコードと契約することとなります。

 また同じく7月に、有名なライブスポットのカフェ・ボヘミアでキャノンボール・アダレイの演奏をいたく気に入り、いろいろとアドバスを与えていたようです。



 ・・・・そんなこんなで8月、プレステッジお得意のジャム・セッション風な本アルバムの録音となる訳です。


 「ビバップ的なサウンドにしたい」という事から、アルトのジャッキー・マクリーンを含むバンドで臨むマイルスですが、そのマクリーンが、スタジオで問題を起こします。
 録音当日麻薬でハイになっていたマクリーン、自作2曲の録音を終えたまでは良かったが、続く「Bitty Ditty」の録音中に突然癇癪を起こして帰ってしまいます。

 前述の「自叙伝(1)」によると、何度も間違えるアート・テイラーに対し、マイルスが親切に教えてやった事に嫉妬したのが原因だとか。

 つまり、「俺(ジャッキー)にはいつも強く当たるのに、なんでアートにはそんなに優しいんだ!」という事。
 マイルスが「繊細ですぐ気に病んでしまうタイプ」であるアートに合わせて指導してしたのに、ジャッキーは気に入らなかったらしい(笑)。
 まあ、麻薬中毒の人の行動は予測がつかない事が多く、特にハイになっている時は、感情の抑制が効かないらしいです。

 録音当日までの背景は、この位にしましょう。それでは、演奏内容を簡単に。


 1曲目、ゆったりしたテンポで演奏されるマクリーン作曲のブルース「Dr. Jackle」で、軽くウォーミング・アップ。
 ミルトのソロに続くマイルスは他のミュージシャンが使うようなお手本みたいなブルース・ソロから、だんだん熱気をはらんだマイルスらしいソロを展開していきます。
 次のマクリーンの短いながらも熱いソロを経てレイ・ブライアント、ミルトとソロ・リレーは進行していきます。


 飛んで3曲目、ハードなアップテンポ・ナンバー「Minor March」では、ソロ一番手のマクリーンが大熱演。彼の辛口のソロを堪能出来ます。
 ミルト、そして畳み掛けるようにハードなフレーズを次々と繰り出すマイルスのソロはお見事!の一言。
 最後に登場するレイ・ブライアントのピアノもかなりハード。ホレス・シルバーみたいに、低音キーをガンガン叩いて演奏を盛り上げます。


 2曲目、サド・ジョーンズ作曲の「Bitty Ditty」では、途中でマクリーンが抜けたせいかマイルスの演奏には覇気がありません。
 何でドラムのアート・テイラーが何度も躓いたのかと思いながら演奏を聴くと、テーマ部のドラム・パターンはちょっと面倒みたいですね。
 このテーマと連動したドラム・パターン、アート・ブレイキーお得意の叩き方なんですが、A・テイラーにはまだちと難しかったか。

 全員の演奏は文句ないのですが、やはりジャッキー・マクリーンが途中で抜けたのが痛い。マクリーンのざらっとした音色のアルトが抜けたせいで、演奏の輪郭がボヤケていますね。


 4曲目、レイ・ブライアントの優雅なオリジナル「Changes」は、今までの曲とは雰囲気が異なり、レイ・ブライアント・トリオにマイルスとミルト・ジャクソンがソロで参加しているみたいです。
 レイ・ブライアントの作り出す優雅な雰囲気に乗って、マイルスもミルトも気持ちよさそうにソロを演奏しております。

 ぼーっと聴いていると、レイのソロ部分なんか完全に、彼のトリオで録音した某有名アルバムそのまんま(笑)。つい、次の曲は「ゴールデン・イヤリング」か?と、勘違いしそう。
 地味なんだけど昔から「アク」の強い人なんですね、レイ・ブライアント。


 マイルスがヤンキー座りをしてる最悪なジャケットのせいか、話題になったと聞いた事がありません。
 ホントこのアルバム、マイルス・デイヴィスの作品だ!とか思いながら聴いてはいけません(笑)。ジャッキーの行動のおかげで、しょんぼりしているマイルスに、過剰な期待は禁物です。

 「マイルス、大丈夫だよ。お前の行動は間違ってないから」と、(心の中で)声を掛けてあげながら(笑)聴く、優しさがある人だけ、こっそりと聴いてみて下さい。案外良いですよ。


●Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextet Prestige PRLP 7034

01. Dr. Jackle (Jackie McLean) * 8:54
02. Bitty Ditty (Thad Jones) 6:35

03. Minor March (Jackie McLean) * 8:16
04. Changes (Ray Bryant) 7:11

Miles Davis (tp) Jackie McLean (as -*) Milt Jackson (vib) Ray Bryant (p) Percy Heath (b) Art Taylor (ds)
Recorded on August 5, 1955 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.



新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-TOCJ-7056 ハブ・キャップ+1-フレディ・ハバード2007/12/07 21:08

HUB CAP - FREDDIE HUBBARD  Blue Note BST-84073

 この作品、しばらく棚にほったらかし状態だった(笑)ものです。
 アンサンブルがシッカリしてるなー思い今回、英文ライナーノートを見て吃驚!2曲できちんと編曲者がいるじゃないか!

 編曲者好き(笑)の私としては俄然、聴く気が出るというものです。



 1曲目のフレディらしい(笑)ド派手な「HUB CAP」。いきなり全員、エンジン全開!ですね。
 「HUB CAP」とは、フレディのニックネームだそうです。


 重厚なアンサンブルが印象的な「CRY ME NOT」は、ピアニストであるランディ・ウエストン(Randy Weston)作曲、編曲はメルバ・リストン(Melba Liston)です。
 彼女は、私が贔屓(笑)にしているクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)楽団に、トロンボーン奏者として参加しておりますね。
 トロンボーンのアンサンブルが心地よい一曲です。

 「LUANA」は、フレディの姪(めい)の名前から拝借したそうです。
 このシリアスな雰囲気は、デビュー作で共演したティナ・ブルックス(Tina Brooks)の作品と通じるものがありますね。
 コード進行は多分、ガーシウィンの有名曲「Summertime」を下敷きにしていると思われます。


 ジャズ・メッセーンジャーズ調の「OSIE MAE」は、ドラムのゆるい(笑)キメが多い曲です。
 ファンキーなシャッフル・ビートに乗り、フレディがリー・モーガンみたいなソロを聴かせてくれます。

 これまたフレディらしい「PLEXUS」は、シダー・ウォルトン(Cedar Walton)の作品です。
 タイトルは、小説家ヘンリー・ミラー(Henry Miller)の『薔薇色の十字架』三部作の第2弾にあたる『プレクサス (1953年/Plexus)』から拝借したそうです。
 最初にソロをとるジミー・ヒース(Jimmy Heath)のハードな演奏が良いです。

 ラスト、ハードバップ調の「EARMON JR.」のアレンジは、エド・サマーリン(Ed Summerlin)。彼はフレディが師事した、作曲家・サックス奏者だそうです。
 哀愁漂うフレディのソロが素敵です。
 なおタイトルは当時、故郷のインディアナポリスでピアニストとして活躍していた、フレディの兄弟の名前から拝借したとのこと。



●TOCJ-7056 ハブ・キャップ+1 / フレディ・ハバード




●HUB CAP / FREDDIE HUBBARD Blue Note BST-84073
01. HUB CAP (Freddie Hubbard) 05:15
02. CRY ME NOT (Randy Weaton) 04:46
03. LUANA (Freddie Hubbard) 10:03

04. OSIE MAE (Freddie Hubbard) 06:51
05. PLEXUS (Cedar Walton) 09:00
06. EARMON JR. (Freddie Hubbard) 06:14

07. PLEXUS (Cedar Walton) -alternate take- 09:09

Freddie Hubbard (tp) Julian Priester (tb) Jimmy Heath (ts) Cedar Walton (p) Larry Ridley (b) Philly Joe Jones (ds)
Recorded on April 9, 1961 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.


<付記>

 Cry Me Not - arranged by Melba Liston

 Earmon Jr. - arranged by Ed Summerlin


新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-サンディ・モーニン+1-グラント・グリーン2007/12/08 20:21


 ・・・・ごめんなさい。非常に印象の薄い作品です。

 タイトル曲の「SUNDAY MORNIN' 」では軽快な3拍子に乗り、グラント・グリーン(Grant Green)が気持ち良くスイングしております。
 ピアノのケニー・ドリュー(Kenny Drew)も結構いけます。

 その他、「GOD BLESS THE CHILD」「SO WHAT」などの超有名曲を演奏しています。


 印象薄い原因はリズム隊が結構あっさりしすぎて、グリーンのねちっこいギターに絡み切れていないからかなあ。


●TOCJ-7057 サンディ・モーニン+1 / グラント・グリーン




●SUNDAY MORNIN' / GRANT GREEN Blue Note BST-84099

01. FREEDOM MARCH
02. SUNDAY MORNIN'
03. EXODUS
04. GOD BLESS THE CHILD
05. COME SUNRISE
06. SO WHAT

07. TRACIN' TRACEY

Kenny Drew (p) Grant Green (g) Ben Tucker (b) Ben Dixon (ds)
Recorded on June 4, 1961 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.


新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-ナイト・ドリーマー+1-ウェイン・ショーター2007/12/09 10:42

NIGHT DREAMER - WAYNE SHORTER  Blue Note BST-84173

 ブルーノート初リーダー作は、あのW・ショーターらしからぬ(笑)爽やかなアルバムです。
 なんでしょうねこの爽快感は。ああ、『Page One / Joe Henderson(BST-84140)』と同じ感じ。
 両作共に参加する、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)のせい(笑)か?


 そしてリー・モーガンとは、『A.ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ』で共演していた仲。
 『決定版ブルーノート・ブック(ジャズ批評ブックス)』をぱらぱらめくるとウェインはこの頃、頻繁にモーガンとスタジオ入りしてみたいです。

 まず2ヶ月前の2月15日には『Search For The New Land / Lee Morgan(BST-84169)』を録音。
 このアルバムの前後、4月24日と5月15日には『Indestructible / Art Blakey & The Jazz Messengers(BST-84193)』で共演しております。

 おっと忘れちゃいけない、リズム・セクションはあのジョン・コルトレーン・カルテットの3人です。
 全体的にアトランテック時代の「J・コルトレーン・カルテット」の雰囲気がするのはそのせいか?


 1曲目はワルツの「NIGHT DREAMER」。何回聴いても爽やかだなあこの演奏。
 あとJ・コルトレーン・カルテットの「My Favorite Things」を思い出してしまいます。

 「ORIENTAL FOLK SONG」は、古い中国の唄からインスパイアされたそうです。
 エルビンのタメを効かせたリズムに乗り、フロントの二人もタメを効かせたロングトーン多めのフレーズを連発します。
 セカンド・リフに続いてエルビンのドラム・ソロがあります。

 お次は自身の誕生日(1933年8月25日生)の星座から命名されたバラッドの「乙女座(VIRGO)」です。
 この曲だけウェインのワンホーンで演奏され、モーガンお休み。
 雰囲気は、4ヶ月後に録音される2枚目のリーダー作『JUJU(BST-4182)』に繋がってますね。マッコイの短いソロも秀逸。


 「BLACK NILE」のタイトルは、アラン・ムーアヘッド(Alan Moorehead)の小説?『The White Nile and The Blue Nile』からインスパイアされたそうです。
 ハードにスイングするこの曲、モード路線のジャズ・メッセンジャーズ・サウンドに近いです。
 と言う訳で、ソロではモーガンが大健闘。前述の『Indestructible / Art Blakey & The Jazz Messengers(BST-84193)』で聴かせる、熱いフレーズを連発します。

 マッコイの短いソロで始まるファンキーな「CHARCOAL BLUES」も、ほぼジャズ・メッセンジャーズ・サウンド。
 ちなみに「CHARCOAL」とは木炭のことらしいです。


 物騒なタイトルがついた「アルマゲドン(ARMAGEDDON)」、シリアスで結構劇的なテーマを持つ曲です。

 ハードなソロを展開するショーター、洒脱なモーガン、高速で鍵盤の上を跳ね回るマッコイとラストの曲としては文句無し。
 バックのエルビンとレジー・ワークマンの強烈なドライブ感も凄いなあ。


●TOCJ-7058 ナイト・ドリーマー+1 / ウェイン・ショーター




●NIGHT DREAMER / WAYNE SHORTER Blue Note BST-84173

01. NIGHT DREAMER (Wayne Shorter) 7:26
  02. ORIENTAL FOLK SONG (Wayne Shorter) 6:48
03. VIRGO (Wayne Shorter) * 7:05

04. BLACK NILE (Wayne Shorter) 6:25
05. CHARCOAL BLUES (Wayne Shorter) 6:51
06. ARMAGEDDON (Wayne Shorter) 6:19

07. VIRGO (Wayne Shorter) * -alternate take- 7:03

Lee Morgan (tp -omit *) Wayne Shorter (ts) McCoy Tyner (p) Reggie Workman (b) Elvin Jones (ds)
Recorded on April 29, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン Vol.1+32007/12/10 22:49

AT THE GOLDEN CIRCLE VOl.1 - ORNETTE COLEMAN  Blue Note BST-84224

 この3曲追加されたCDを聴いた第一印象は『演奏する喜びに満ち溢れた作品だなあ』でした。
 普段フリーを聴かない人も偏見持たずに、一度は聴いて欲しいアルバムです。

 2002年に米ブルーノートのホームページで発売告知を発見して、即購入に走りました(笑)。
 VOL.1には、オリジナルアルバム未収録の「DOUGHNUTS」が追加されている事にも要注意。



 ファスト・テンポの1曲目「FACES AND PLACES」から、オーネットはアルトで吼え(笑)ます。
 まあフリー・フォームのピアノレス・トリオで、飽きさせる事なく聴かせること事が出来るとは・・・・。

 「EUROPEAN ECHOES」はカワイイ3拍子の曲です。
 流石に3拍子では無茶出来ない(笑)のかオーネット、とってもメロディアスなフレーズを聴かせてくれます。


 「DEE DEE」は、子供向け番組のテーマソングみたいに陽気に弾ける曲です。
 チャールス・モフェットの変化に富んだドラムに乗って、オーネットのソロも弾けます。

 「DAWN」は、ちょっと物悲しい感じがするスローテンポの曲です。
 間の多いバッキングに乗せて、オーネットのソロもじっくり聴かせます。


 今回追加された「DOUGHNUTS」は、「FACES AND PLACES」のアンサーソングみたいな曲です。
 前乗り気味のリズムに合わせて、オーネットが突っかかるようなフレーズを聴かせます。


 ・・・・次回は、問題(笑)の「Vol.2」です。いろいろあるので、覚悟して聴かないと。
 フリー嫌いの良い子(笑)は、「Vol.1」で止めた方がいいかもね。

●TOCJ-7059 ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン Vol.1 +3 / オーネット・コールマン




●AT THE GOLDEN CIRCLE VOl.1 / ORNETTE COLEMAN Blue Note BST-84224

01. ANNOUNCEMENT 01:09
02. FACES AND PLACES (Ornette Coleman) 11:37
03. EUROPEAN ECHOES (Ornette Coleman) 07:53

04. DEE DEE (Ornette Coleman) 10:38
05. DAWN (Ornette Coleman) 08:05

06. FACES AND PLACES (Ornette Coleman) -alternate take- 08:31
07. EUROPEAN ECHOES (Ornette Coleman) -alternate take- 14:13
08. DOUGHNUTS (Ornette Coleman) 13:30

Ornette Coleman (as, tp, vln) David Izenzon (b) Charles Moffett (ds, glockenspiel)
Recorded on December 3 & 4, 1965 at "Gyllende Cirklen", Stockholm, Sweden.


新・ブルーノートRVGコレクション第6回より-ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン Vol.2+32007/12/11 19:30

AT THE GOLDEN CIRCLE VOl.2 - ORNETTE COLEMAN  Blue Note BST-84225

 ・・・・今回は「Vol.1」に引き続き、問題(笑)の「Vol.2」です。
 オーネットは1曲だけ、アルト以外に何故(笑)か引退期に密かに練習した「ヴァイオリン」と「トランペット」を持ち出します。



 いきなり狂ったようにヴァイオリンを弾き倒す「SNOWFLAKES AND SUNSHINE」は、まさにフリーな演奏(笑)。

 途中、トランペットに切り替えてヴァイオリンで弾いたのと同じフレーズをかましてくれます。

 えー、演奏途中に何度も持ち替えをするので、段々訳が分からなくなってきまーす(笑)。
 まあ、チャーネット・モフェットの変幻自在なドラムを聴くためのトラックですね。


 1曲目の狂乱に疲れたのか(笑)気だるい「MORNING SONG」は、アルトに持ち替えても演奏です。
 微妙にゆっくりな曲にもかかわらず、飽きさせず聴かせます。オーネットの艶のある音色が冴えるトラック。


 「THE RIDDLE」は、疲れも取れたのかリズム隊が再び荒れ狂っております。
 オーネットは引き続きアルトで演奏。艶のある音色で、素早いフレーズを連発。
 チャールス・モフェットの叩き出すシンバルから生み出されるスイング感がたまりません。


 ラストの「ANTIQUES」は、意外と普通の曲(笑)。ただ、これが意外とイケる(笑)んだ。
 この曲だけは、3人ともフツーのジャズを演奏してます。


●TOCJ-7060 ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン Vol.2+3 / オーネット・コールマン




●AT THE GOLDEN CIRCLE VOl.2 / ORNETTE COLEMAN Blue Note BST-84225

01. SNOWFLAKES AND SUNSHINE (Ornette Coleman) 10:42
02. MORNING SONG (Ornette Coleman) 10:41

03. THE RIDDLE (Ornette Coleman) 09:54
04. ANTIQUES (Ornette Coleman) 12:35

05. MORNING SONG (Ornette Coleman) -alternate take- 08:16
06. THE RIDDLE (Ornette Coleman) -alternate take- 12:39
07. ANTIQUES (Ornette Coleman) -alternate take- 13:00

Ornette Coleman (as, tp, vln) David Izenzon (b) Charles Moffett (ds, glockenspiel)
Recorded on December 3 & 4, 1965 at "Gyllende Cirklen", Stockholm, Sweden.


<ちょっと長めの付記>

 『ブルーノートの真実/小川隆夫著(東京キララ社)』に、このアルバムが発売された経緯が詳しく載っております。

 オーネットのカムバックによって、ライオンの念願がかなう。「ゴールデン・サークル」のライブ・レコーディングをしないか? という申し出がオーネット・サイドからあったのだ。

 「例の「タウン・ホール」の一件に、オーネット自身も巻き込まれていた。それで、わたしのことを思い出してくれたのかもしれない。光栄なことだよ。
 ヨーロッパでカムバックして、ヨーロッパのレコード会社からアルバムはリリースされるようになっていた。
 その彼が、カムバック後、アメリカで発売される最初のレコード会社としてブルーノートを指名してくれたのは非常な名誉だ」


 さらに小川隆夫さん関係で、蛇足をもう少し。

 文中に登場する「タウン・ホール」でのライブ盤は、当初ブルーノートから発売される予定だったそうです。
 しかし途中に契約上のゴタゴタが発生し、でテスト盤の制作までしたにもかかわらず、お蔵入りしてしまいました。

 著者の小川隆夫さんは、1986年にアルフレッド・ライオンの主治医をボランティアで務めたお礼として、幻のテスト盤(2枚組)をマイケル・カスクーナからプレゼントされたそうです。
 小川さんの『世界で唯一のブルーノート完全コレクター』の称号は、「タウン・ホール・コンサート(2枚組)」を所有していることから、戴いたものでしょうね。

 小川さんが東京で行うイベント企画などで、まれに聴かせてくれるらしい「タウン・ホール・コンサート」。一度は聴いてみたいものです。

『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100/小川隆夫(河出書房新社)』2007/12/12 06:05

『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100-小川隆夫

 小川隆夫さんの最新刊『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100(河出書房新社)』が発売になりました。
 すでにこのシリーズは2冊程発売されており、今回の作品が3冊目となります。

 内容は、有名ジャズ・ミュージシャンにジャズの名盤(でないものもある)アルバムを聴いてもらい、その時のコメントをアルバム単位でまとめた、データベース的な本です。


 今回は流石に私も未聴の作品が多かったですが、こっそり愛聴する作品が何枚か掲載されており、3冊中一番読み応えのある作品でした。

 掲載されているアルバムをざっと拾ってみると、次のような感じです。
 『春の如く/アイク・ケベック(Blue Note)』から始まり、『ソニー・クラーク・トリオ(Time)』、『テンダー・フィーリンズ/デューク・ピアソン(Blue Note)』などなど・・・。


 中級以上のジャズ・ファンやジャズ喫茶の親父さん達が愛聴していていそうなアルバムがどっさり掲載されております。

 巻頭には、小川さんがジャズメン達にもらったサイン入りCDが8ページに渡り掲載されております。こちらも本作のポイントですね。



『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100(河出書房新社)』



●既刊●

『ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤 100』


『ジャズマンはこう聴いた! 珠玉のJAZZ名盤 100』



 中に掲載されたアルバム(CD)は、CD棚から探し出してゆっくりとご紹介しようかと思います。

ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100/小川隆夫 -ブルー・ノート(Blue Note)編#1-2007/12/14 21:15



 『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100/小川隆夫(河出書房新社)』の中から、ブルー・ノートの作品を紹介したものだけを抜き出してみました。
 詳しいコメントは、本書をご参照下さい。


●春の如く/アイク・ケベック


 緑色のジャケットが素敵な一枚。出来ればLPで聴いて欲しい作品。
 コメントは、スタンリー・タレンタイン(1986年)とジャッキー・マクリーン(1998年)です。


●抱きしめたい/グラント・グリーン


 美女ジャケットにつられて購入した方いませんか?(笑)


●クリフ・クラフト/クリフォード・ジョーダン


 当時(1957年)のホレス・シルバー・クインテットのメンバーで、ピアノにソニー・クラーク参加。
 コメントは、ジョニー・グリフィン(1986年)と、ジョージ・コールマン(1988年)。


●ジャッキーズ・バッグ/ジャッキー・マクリーン


 ブルー・ノートにおける初リーダー・セッションと、ティナ・ブルックスらとのセッションを組み合わせたもの。
 コメントは、フィル・ウッズ(1991年)、ルー・ドナルドソン(1998年)、そして日本の山田穣(1998年)。


●トゥルー・ブルー/ティナ・ブルックス


 ティナ唯一のリーダーアルバム。私はLP時代にジャケット買いしました。
 コメントは、ジャッキー・マクリーン(1998年)、スタンリー・タレンタイン(1999年)