3人の音楽匠達-Power of Three / Michel Petrucciani [Blue Note BST 85133]2007/04/20 05:31

BN85133 Power Of Three - Michel Petrucciani

 加持です。今日はちょっと暖かいですね。


 M.ペトルチアーニ(p)の2作目は、1986年7月にスイスで開催された有名なモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音です。
 モントルーで真っ先に思い出すのが「お城のジャケット」、1968年のビル・エバンス・トリオのライブ録音(Verve)ですか・・・。

 ちなみにその年はフェスティバル開催20周年を記念して、E.クラプトン、D.サンボーン、G.ベンソン、M.デイビス、H.ハンコック、G.デュークなどの大物が参加していました。いやー凄いメンツですね。


 基本的にはJ.ホール(g)とのデュオなのですが、何曲かにW.ショーター(ts, ss)が参加しています。


 さて始めにこのライブ・アルバム、1962年に録音された「Undercurrent / Bill Evans & Jim Hall (Liberty UAJS 15003)」を比較されることが多いようです。
 しかし、ピン!と張り詰めた緊張感漂う24年前の演奏とは異なり、ひたすら陽気で、ライブならではのリラック・ムード漂う作品に仕上がっております。


 どの曲もそれぞれ聴き応えがあるのですが、中でも最後の2曲がいいですね。

 デュオで演奏されるD.エリントンの作のバラッド「In a Sentimental Mood」では、M.ペトルチアーニ(p)とJ.ホール(g)の和やかなインタープレイが楽しめます。
 特にシングルノートで綴られるピアノ・ソロ、「明るいビル・エバンス」とでも喩えれば良いのかな?美しいですね。

 3人揃っての「Bimini」は、楽しい祝祭の最後を締めくくるに相応しいミディアム・テンポのナンバーです。
 演奏中ずっと聴こえるJ.ホールの何気ないコード・ストローク、思わず「いよっ!名人芸!」と声を掛けたくなりますね。


 会場内の反応(拍手)も、非常に友好的な雰囲気のようです。現在、映像版(DVD)も発売されているので、三人の「音楽匠の技」どちらかお好きな方でお楽しみ下さい。

●Power of Three / Michel Petrucciani Manhattan Blue Note BST 85133

01. Limbo (W.Shorter) *
02. Careful (J.Hall)
03. Morning Blues (M.Petrucciani) *

04. Waltz New (J.Hall)
05. Beautiful Love (Gillespie-Young-King-Van Alstyne)

06. In a Sentimental Mood (M.Kurtz-I.Mills-D.Ellington)
07. Bimini (James S.Hall) *

Wayne Shorter (ss, ts -*) Jim Hall (g) Michel Petrucciani (p)
Recorded on July 14, 1986 at'Montreux Jazz Festival', "Casino de Montreux", Switzerland

※04,05の2曲は、LP(BST85133)未収録です。

●2003年に再発されたUK盤です。
Power of Three
●リージョン1(北米仕様)のDVDです。


名門レーベル復活の日-One Night With Blue Note Vol. 1 [(Manhattan) Blue Note BST 85113]2007/04/12 07:02

One Night With Blue Note Volume 1

 加持です。
 資料が揃って来たのでこれから「新生ブルーノート(Manhattan Blue Note)」のアルバムをいくつか取り上げたいと思います。
 最近の「新生ブルーノート」は、ノラ・ジョーンズ(vo)のアルバムがビック・ヒットを記録していますね。



 さて、1985年2月22日に名門ジャズレーベル、ブルーノートが復活しました。
 それまで80年代前半のブルーノートは、純粋なジャズ・マーケットの減少(ロック・マーケットの拡大)に伴い、新録音を停止してつかの間「休眠」していたのです。
 丁度、「新伝承派」ウイントン・マルサリス(tp)の登場により活気づいたジャズ・シーンに、フュージョンに転向していたかつてのジャズ・メン達も、こぞって回帰しつつあった頃です。


 このアルバムは、第1回新譜発売に合わせてニューヨークのタウンホールで行われたコンサートの模様を収めたものです。

 創業者のアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)、本アルバムや過去多くのカバーデザインを手がけたリード・マイルス(Reid Miles)らが見守る中、出演アーティスト達は非常にテンションの高い演奏を繰り広げます。

 特に「Volume 1 [BST 85113]」は、フレディ(tp)、ハービー(p)などが顔を揃え「新主流派」時代の曲を取り上げているのでお勧めです。

 1曲目はハービーの「Empyrean Isles [BST4175]」から「Cantaloupe Island」、2曲目はジョー・ヘンダーソンのデビューアルバム「Page One [BST4140]」から「Recorda Me」、飛んで5曲目はフレディ、トニー、ハッチャーソンが参加したエリック・ドルフィーの「Out To Luch ! [BST4163]」から「Hat And Beard」、残り2曲はハッチャーソンの作品ですね。


 アルフレッド・ライオンが目の前に居るのですから、当時可愛がってもらったアーティスト達が張り切らない訳がありませんね(~~)。

 中でもフレディ・ハバード(tp)の気合の入り方が半端じゃないですよ!あとフルートで参加するジェームス・ニュートンも結構良いです。
 まあとにかく、いろんな意味で素晴らしいライブ・アルバムです。

●One Night With Blue Note Vol. 1 [(Manhattan) Blue Note BST 85113]

01. Cantaloupe Island (H.Hanckck)
02. Recorda Me (J.Henderson)
03. Little B's Poem (B.Hutcherson)
04. Bouquet (B.Hutcherson)
05. Hat And Beard (Eric Dolphy)

Recorded on February 22, 1985 at "Town Hall", NYC.


●track 01
Freddie Hubbard (tp) Joe Henderson (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)
●track 02
add Bobby Hutcherson (vib)
●track 03
James Newton (fl) replaces Hubbard (tp) Henderson (ts)
●track 04
Bobby Hutcherson (vib) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b)
●track 05
James Newton (fl) Bobby Hutcherson (vib) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)


 ドラムのトニー・ウィリアムスは、「新生ブルーノート」と契約し「Foreign Intrigue [BST85119]」を皮切りに素晴らしいアルバムを発表していきますが、詳細は次の機会にご紹介します。

 なお現在日本では、「新生ブルーノート」初期アルバム群はほとんど売り切れ!という状況ですので、欲しいものがあれば中古市場で根気よく探して下さい(アマゾンだと米盤のCDでも、約5,000円~で展示しているようです、うーん)。


●おまけ1●
 「新生ブルーノート」の始動には、日本での旧譜の売り上げが好調だったことが大きく関わっているようです。
 コンサートが開催される前年、1984年にはジャズ批評社から「全ブルーノート・ブック」が発売され、同年に東芝EMIの行方均氏「1500番のアルバム(LP)」を番号順!に発売し、日本のジャズファンにブルーノートを積極的にアピールしていたようです。

●おまけ2●
 コンサート当日は日本から行方均氏の他、”世界唯一の完全ブルーノート・コレクター”小川隆夫さんも参加されたそうです。
 その時に小川さんらが行った「アルフレッド・ライオンへのインタビュー」が、以降の著作、CDライナーノート、ジャズ各誌への記事で読むことが出来ます。
 あ小川さんの、マイルス・デイビス(tp)への最初のインタビューも同じ時期でしたね。


●ライブDVD

●再発盤

無防備なウイントンが聴ける!-Elvin Jones "Special Quartet" featuring Wynton Marsalis [Sony]2007/03/25 07:47

Elvin Jones "Special Quartet" featuring Wynton Marsalis

 新潟は「週末は今日も雨」ですね。


 今日は1992年、エルビン・ジョーンズ(ds)のピット・インでのライブ盤。

 スペシャルゲストに、ウイントン・マルサリス(tp)が参加しています。


 2日間のライブ・レパートリーは、インパルス・レーベル時代、エルビン参加時のジョン・コルトレーン(ts, ss)・カルテットの演奏曲で、ぼ、まとめられていました。


 なおこのアルバムには、2日目(12月4日)の演奏が収録されているそうです。


 CDはいきなり、至上の愛(A Love Supreme)から始まります。

 でも、有名な「掛け声(?)」は、なし(~~)。

 ピアノのイントロの後、ウイントンがテーマ部を厳かに吹き始める所で、お客さんが「おおー!」という感じで歓声をあげるあたり、当日のライブの雰囲気が伝わっていいですね。


 ・・・全編に渡り、怒涛のエルビンのドラムによる波状攻撃に立ち向かうかのように、ウイントンが全力疾走で吹きまくる!

 「トランペット好き」な方はもちろん、「ウイントンが嫌い」と言っている方にも、このアルバムはお勧めしたいです。

 なんでそこまで言い切れるか!という訳は・・・最後までお読みください(~~)。


 で、このアルバムの収録曲は、次の通り。

●Elvin Jones "Special Quartet" featuring Wynton Marsalis
Live At "PIT INN" Tokyo, Japan [Sony SRCS 7376]
Tribute To John Coltrane "A Love Supreme"

01. A Love Supreme (J.Coltrane)
(Part 1:Acknowledgement/Part 2:Resolution/Part 3:Pursuance)
02. Dear Load (J.Coltrane)
03. Happy Birthday For "Yuka" (trad)
04. Blues To Veen (Wynton Marsalis)

Wynton Marsalis (tp) Marcus Roberts (p) Reginald Veal (b) Elvin Jones (ds)
Recorded on December 4, 1992 at PIT INN, Tokyo, Japan

Arranged by W.Marsalis (1, 2, 4) & E.Jones (3)

 ※アルバム購入リンクは、検索して掲載しますね。



 ・・・でこれからは、「お勧めする訳」をお話します。

 実は私もウイントン目当てで、初日(12月3日)のセカンド・セットに行きました!会場で聴きました!


 ・・・本当に伸び伸びと、しかも無防備に吹きまくるウイントンに接して、その日から彼の虜になってしまいました(~~)。


 私の観たセカンド・セットでは、このアルバム収録曲とはまったくかぶらない、ジョン・コルトレーンの曲を演奏(おまけ2参照)してましたが、観客はこのライブ・アルバムに劣らず、熱気に包まれて凄かったなー。


 ある曲では、循環呼吸(おまけ1参照)を使い、息継ぎ無しに延々とらっぱを吹きまくるわ、全力疾走の彼は、もう凄い!の一言。

 そんなウイントンに対し、お客さんも盛大な拍手喝采を浴びせるという、本当に幸せなひとときでした。


●おまけ1-循環呼吸とは?●
 「口から息を吐きながら、同時に鼻で呼吸する」事で、音を途切れさせない演奏方法。

 息継ぎで音が途切れることなく演奏出来る、魔法のような呼吸法です。

※これはネット等で、私が独自に調べた内容をまとめたものです。間違っていたら、こっそりお知らせ下さい(~~)。


●おまけ2-初日 2nd set play list by kajiakira●

Elvin Jones and Young Lions [December 3, 1992 2nd set]

01. Crecent (J.Coltrane)
02. Wise One (J.Coltrane)
03. Bessie's Blues (J.Coltrane)
04. Lonnie's Lament (J.Coltrane)
05. The Drum Thing (J.Coltrane)
encore
06. Transition (J.Coltrane)


Wynton Marsalis (tp) Marcus Roberts (p) Reginald Veal (b) Elvin Jones (ds)
Recorded on December 3, 1992 at PIT INN, Tokyo, Japan


※ここの曲目リストは、当時の資料などを元に、私が長年地道に調査したものです。
 間違い等があれば、お知らせいただけると嬉しいです(~~)。


※当時の「ジャズ・ライフ」誌によると、初日の1stセットでは、「至上の愛」、「グリーン・チムニーズ」、「朝日のようにさわやかに」などが演奏されたようです。


※このブログを見て、ソニーさんが「未発表曲集」としてCD化してくれると嬉しいなあ。


☆さすがにアマゾンさんでも、新品品切れのようですね。